夏休み中ですが1本アップいたします。
もうかれこれ20年ほど前なので時効の話だ。
ある小売業の取引先会が開かれ、卸売企業の社長が締めの挨拶に立った。
「えー、経済状況が悪化しており、いまや企業は厳しいリラストを実行しなければいけません」。
一瞬、会場に失笑が沸き起こった。会場の誰もが、〈リストラ〉と〈リラスト〉を単純に言い間違えたと考えたからだ。
卸売業社長は続けた。
「リラストしなければならない企業は、バブル期に放漫経営してきたからであり、そのツケを払っているのであります」。
こうなるともう目も当てられない。
社長は〈リストラ〉のことを〈リラスト〉と覚えていたのだ。
彼はその後も、4度にわたって〈リラスト〉と言い続けたけれども、側近を含め、誰も止めに入ることができず、“痛い”様をさらしながら、颯爽と降壇した。
同じような話としては、大物演歌歌手の故村田英雄さんがスナックに行って、「俺のボルトを出せ!」と言ったというエピソードがあるが、これはビートたけしさんのネタのひとつだ。
しかし、こちらはビジネスシーン、しかも参加者全員が注目する締めの言葉。喋っているのは、取引先会の会長兼卸売業の社長である。
お気の毒というほかに適当な言葉が見当たらないが、こんなことがなぜ起こってしまうかと推測してみれば、〈リストラ〉を〈リラスト〉という誤った単語として、記憶してしまったからなのだろう。
語源に戻って、「リ・ストラクチャリング」、つまり、ストラクチャリング(=構築)をし直すこと、と短縮せずに覚えていれば、あるいは言い間違えから逃れることができたかもしれない。
と言ったところで後の祭りだ。
この小っ恥ずかしい話から何を学べるかと言えば、記憶違いや言い間違いは、肩書きなど関係なく、誰にでも起こり得るということだ。
だから、側近の方たちも含め、その時に備え、危機管理策を用意しておく必要があるということだ。