ある経営者から約2年間にもわたって、お借りしていたDVDをようやくお返しした。
ちょっと照れながら、「これっ。すみません」と手渡している時に、ふと年上の友人に言われた言葉を思い出した。
「CDとかDVD、本やレコード、割り勘なんかのお金も含めて、借りた方は忘れてしまうんだけど、貸した方は絶対に忘れないから」。
自分を顧みても同じことが言える。
6年前に貸したDVDや3年前に貸したDVD、半年前に貸したビジネス書…がいまだに返ってこないけれども、誰にどういうことを意図して貸したのかは、鮮明に覚えている。
ただ、もう時効と考えて、あえて口に出さないだけだ。
別に恨んだり、憎んだりするわけではないのだが、私の心の中ではそれらの人たちに対して「だらしない」という烙印を押している。
モノの貸し借りは、被害者と加害者に似ている関係だ。
しかも、貸した方が立場の弱い被害者になってしまうのだから、もう貸さない方がいいのかもしれない――。
と、その経営者は、私に対して思っていたに違いない。