5月25日、釣具専門チェーン上州屋(埼玉県/鈴木健一社長)の創業者、鈴木健児さんが死去した。95歳。7月2日には、東京都台東区浅草「東本願寺」で社葬が営まれ、約1000人が故人を偲んだ。
鈴木さんは、終戦後、東京都足立区千住周辺で豆腐屋を10店舗ほど経営していたが、昭和38年、「これからはファミリーフィッシングの時代が訪れる」と釣具店を開業。「他人とは同じことをしない」を信条に大型店の出店、チェーン展開、SPA(製造小売業)化などを次々と進め、“釣り業界の革命児”として上州屋を日本最大の釣具チェーンに育て上げた。
鈴木さんが企業運営と同じくらい力を入れていたのが環境保全活動だ。「水は地球の生命【いのち】です」をモットーに釣り人にマナーを訴え続け、環境省から幾度も表彰されている。平成12年には勲5等双光旭日章を受章した。
私生活では、趣味の釣り、カラオケに明け暮れた。とくにヘラブナ釣りは、業界内では右に出る者がいないほどの凄腕。カラオケは、毎月1度、12人ほどのメンバーで構成される「プリンス会」を主催して、『影を慕いて』『かえり船』など、死の直前まで自慢の喉を唸らせていた。「釣り具業界の一時代が終わった」と社葬の参列者は口を揃えて惜しんでいた。合掌。
『チェーンストアエイジ』誌2013年7月15日号