(昨日の続きです)
●総合金融事業について
「金融事業は、現在、森美樹副社長の下、順調に進んでいる。直近の営業収益は1942億円(対前期比15.9%増)、営業利益は338億円(同53.6%増)だ。イオングループの借入金の中にはイオンクレジットサービスの借入金も存在する。これは商品であるのだが、マーケットではなかなか理解されず、非常に苦労してきた。そんな折にイオン銀行をスタートさせたので、はじめは相当苦戦した。しかし、今は見事に軌道に乗っている。たとえば、個人向けの無担保ローンは、銀行がお客様の預金を使って融資することができるわけだ。今後、金融事業の借入金増加は抑えられるだろう。なお、今年4月にイオンクレジットサービス(千葉県/水野雅夫社長)は、イオン銀行(東京都/森山高光社長)との経営統合によって銀行持株会社体制に移行し、商号をイオンフィナンシャルサービス(千葉県/神谷和秀社長)に変更した」
「イオンは、アジアで唯一の消費者のための金融サービス集団になりうる。ユニークかつ強力なグループ作りにイオンフィナンシャルサービスが果たす役割は非常に大きい。2016年にはフィナンシャルグループで約1000億円の営業利益を生み出すことが可能だと考えている」
●消費税増税について。
「はっきりしているのは消費税増税で景気がよくなることはないということ。良くない景気の中で商品の値上げなどできるわけがないということだ。2014年4月1日以降、熾烈な価格競争が起こることは間違いないだろう。きっと欧米各地で見られたように、増税は、熾烈な価格競争を惹起し、安売りディスカウンターを勃興させ、高価格小売業や中小小売業低迷することになるだろう」
「増税時期や規制について政府はとても不勉強だ。今のままでは、消費税を増税しても税収は前回の引き上げ時同様に増えないかもしれない」
「《消費税還元》の名目でのセール実施を禁止する特別措置法案には反対だ。法案は明らかに行き過ぎである。これは、いまの政権が最も忌み嫌う社会主義国家が行っている以上の経済への政治介入だ。イオンは営業の自由どころか、言論の自由まで損なうことを憂う。言葉の使用禁止とはすなわち言論統制だ。もしこの法案が成立するようであれば、商人としては屈辱だ」
「周知のように日本では、1940年~1945年の間は統制経済体制だった。『日本小売業運動史』(公開経営指導協会:刊)という本がある。その中に、『1940年。戦争に突入するので贅沢品の統制が行われ、販売禁止された。その時にある小売業は、在庫を一掃するために、〈お買い得チャンス。こんな機会は2度とない〉というコピーでセールを実施したところ経済警察に逮捕された』という話が紹介されている。いまは、この状況とあまり変わりないと思う」
「消費財増税そのものについて、異を唱えているわけではない。すでに実施に備えて、イオンはイオンとしての対策を練っている。イオンは価格志向の「トップバリュ ベストプライス」を軸にPBを拡大し、グループの中のディスカウントストアであるTHE Big(ザ・ビッグ)も強化する」
●次世代の人材について。
「次世代の人材については2つあり、1つは女性の活用に重きを置きたい。若手女性社員は、結婚・子育てとキャリアの追求を同時にすることを難しいと考え、不安を感じている。イオンの新卒学生は入社段階では男女比率は1対1。しかし、部課長以上の管理職比率は7%。10年たつと女性の大半はやめてしまう。これは非効率であり生産性を低下させる大きな原因になっている」
「転勤や子育て、勤務パターンについて、あまりにも配慮がなさすぎて、やってきたという反省がある。社内やショッピングセンター内における託児施設の設置などに取り組んでいきたい。女性の活用は社会正義のために行うのではなく、企業力強化のために行う。2016年には管理職の30%、2020年には同50%まで持っていきたい」
「2つめは所得についてだ。過去10年間を見ると、日本企業のトップマネジメントの所得水準はグローバルスタンダード化への圧力もあったりして、大いに変わった。国内企業の社長の報酬は22%上がったというデータもある。だが、その分、大卒初任給や時間給の人たちの給与は抑えられてきた。イオンはこれをなんとかしたい。給与体系を再度見直す。トップから若い人たちへの配分傾斜を変えたい。何より小売業なので、時間給の人たちの処遇改善に当たり、生産性向上に取り組んでいきたい」