フードデザート(食の砂漠)問題は深刻だ。
高度成長期の真っ只中に建設されたニュータウンからは、食品スーパーを始め、次々と小売業者が撤退し、残された高齢者にとっては、まさに死活問題だ。
行政は、打ち手を決めあぐね、根本対策が打てない。小売業者を再び、誘致するには補助金などのカネが必要――。
そうした中で、近隣の県から、生鮮食品などをトラックに載せ訪問、ニュータウンの駐車場で移動販売する人たちの姿が多く見られるようになっている。
移動販売には、あてがわれるのではなく選ぶ喜びがあるため、交通手段を持たない高齢者には好評だ。
一方、移動販売者にとってのメリットは、商品を定価販売できる点にある。
高齢者には、戦争での飢餓の経験から、冷蔵庫を常に満タンにキープする傾向が見られる。
さらに、買い物弱者は、移動販売が継続してくれるのを願って、買い支えに走る。商品を玄関まで運んだりすることで、購入額は1万円に達することもあるという。
こうした生鮮食品の移動販売は増えていると言われるが、業者は神出鬼没であるがゆえに、正確な動向を把握することは難しい。
いまのところ移動販売は、悪徳業者も含めた玉石混交の世界と察せられるが、きっと、こうした人たちの中から、次世代の起業家が生まれてくるのだろう。