9月26日、ユニクロ(山口県/柳井正社長)と東レ(東京都/日覺昭廣社長)は、2012年の「ヒートテック・ウルトラライトダウン」共同会見を開催した(@パークハイアット東京 ボールルーム)。以下では、柳井社長の発言をまとめた(談:文責・千田直哉)
2012年~13年の秋・冬、我々は「ヒートテック」及び「ウルトラライトダウン」を全世界でそれぞれ1億3000万枚、1300万枚を売っていきたいと考えている。
東レさんと戦略的パートナーシップを結んで2年。本当に良かったと思う。
東レさんは技術の企業で繊維分野では世界で唯一、本格的に研究・開発を繰り返している。その技術がカーボンや液晶や水の濾過など、他の分野にも生かされている。
いままでになかったものをつくりあげる――。
東レさんは、原材料の供給者としては素晴らしい企業だ。
しかしながら、繊維分野は最終的に商品にしないことには、どんなに良い原材料でも、その効能はお客さまには伝わらないところはある。
一方、ユニクロは商人の集団だ。
我々は、マーチャンダイジングとマーケティングの企業である。
東レさんの技術に我々のマーチャンダイジングとマーケティングが加わると素晴らしい繊維商品になる。我々は、アパレルの最終商品を製造する能力と小売業としてそれを販売する能力を持っている。
その両社のパートナーシップから生まれてきた「ヒートテック」と「ウルトラライトダウン」は毎年、進化させており、年を追うごとに販売枚数も上がっている。
たとえば、「ヒートテック」は2011年には1億枚を売り切った。販売初年度の2005年からの累計販売枚数は2億9900万枚に上っている。
同業他社からも同じような商品が販売されており、「ヒートテック」のような機能性インナー市場は成熟している、と見る向きもある。
しかし、我々は成熟しているとは考えていない。確かに何もせず、同じ商品を売り続けていれば市場は成熟するだろう。
ところが我々は、毎年毎年、「ヒートテック」にイノベーションを加え続けているのだ。
2012年ならば、①アイテム数2倍、色柄数2.5倍(対前年比)、②ウイメンズルームウエア、ベビー用を新発売、③新機能「吸放湿」を付加する、同時に価格は下げているのだ。
2009年から販売を開始した「ウルトラライトダウン」も同様で、高度なナイロン染色技術を駆使することによって、2011年の51色柄から2012年は107色柄と倍増させている。
だから、これらの市場が成熟することはないだろう。
ところで、東レさんと我々の取引額は、現在、年間で1000億円以上ある。できれば数年後には数千億円の取引ができるようにしたい。これは今までの繊維業界にはなかったことだし、世界中を見回しても前例はほとんどないと思う。
この関係は17年間、温めてきたことの賜物であるけれども、日本の企業同士だったからうまくいった、とも考えている。
日本の商人道の中では、相互の信頼関係が一番大事だ。ある時には損得抜きでお互いに協力したりもする。それが両社のうまくいっている大きな要因である。
東レさんのキャッチフレーズは、「Innovation by Chemistry」。そう、我々と東レさんの共通点は《イノベーション》にある。
東レさんの経営の質は非常に高い。イノベーションと経営力の高さ、そして技術と製品化する能力が備われば、凄い製品ができるに決まっている。
そして、我々は東レさんと一緒になって新しい産業を創り上げようと考えている。イノベーター、経営者、技術者、商人がひとつになって世界最強のバーティカルカンパニーを創る。
お客様の生活を豊かに、ライフスタイルそのものが変わるような画期的な商品を次々と創り、売っていきたい。