電子メールの便利さと生来の字下手ぶりが相まって、もう十年以上、手書きの手紙を出したことがない。
以前は、年賀状くらいは、手書きしていたものだが、プリントごっこの便利さに身をゆだね、パソコンの普及で簡単印刷ができるようになってからは、それすらもしなくなってしまった。
そんな折、先日お会いした某メーカーの販売促進担当者は、「人の書く文字ほど力強い訴求力を持つものはない。我々が、いかに知恵を絞ってPOPなどの販促物をつくろうが、売場の方々の手作りのものにはハナから敵わない」と言い切った。
可愛らしいタレントを使ってポスターを作っても、売場の中では埋もれてしまい全然目立たない。むしろ、多少下手ではあっても、誠意のこもった販促物の方が、お客の心を打つのだという。
確かに人工的な文字は味気ないものだ。パソコンでつくった年賀状も、見栄えはいいけれども、何の印象も残らないまま忘れてしまうのがほとんどだ。
そう考えると、ここ数年、《コトPOP》(手書き型POP)が流行し、実際に効果を上げている背景には、そんな理由があるのだろうと理解できる。
そして、そうだとするならば、私も負けてはいられない。
恋文のひとつも手書きで書いて、結果を出してみようと考えてみるのだが、あいにく私は妻帯者であった。