パンの消費量が多い京都で、有名ベーカリーチェーンとして知られるのが「志津屋」だ。人気商品の「カルネ」は不動の人気を誇り、素朴ながら定期的に食べたくなる。今回は、そんな志津屋の本店に足を運び、商品をあれこれ食べるという企画である。
妻の名前にちなんだ屋号
京都ではパンがよく食べられる。その理由は諸説ある。ひとつは、京都人は新しいもの好きであるため、外国からやってきたパンをいち早く生活に取り入れたというもの。よく「伝統は革新の連続」と言うが、伝統ある京都とパンの関係を同様の理屈で論じたと思われる。
京都は織物をはじめ職人が多く、仕事の合間にも手軽に食べられるパンが好まれたという説も説得力がある。サンドイッチ伯爵が、カードゲームに熱中していても食べられる料理としてサンドイッチを好んだ、みたいなものか。
他にも色々あるけど、どれが正解かは不明。しかし、省みるに私も日常的にパンを食べている。朝食は大体そうだし、昼食もパンで済ませることも少なくない。なぜと聞かれると困るが、しばらく自問したい。
さて今回は、パンが愛される京都で有名なベーカリーチェーン「志津屋」の本店(京都市右京区)を訪問するという企画である。
志津屋は昭和23年(1948年)、創業者の堀信氏が京都市中京区河原町六角下(さが)るに洋菓子の委託加工取次店を開業したのが起り。1951年に会社設立、以降も、近代的な製造設備を備える工場を完成させるとともに、店舗網を徐々に拡大。現在、京都市を中心に22店を展開している。
なお屋号は、創業者が、奥さまの名前「志津子」さんにちなんでつけたというエピソードは地元でよく知られている。愛妻家だな。
脱線するが、私は学生時代、志津屋のとある店でアルバイトをしていたため個人的に思い入れもある。ただ本店に行くのは今回が初めてで、とても楽しみだ。
現地に向かうため、四条烏丸から市バスに乗る。観光地の嵐山方面行なので混雑しているのではと警戒したが、意外にも空いていた。車窓を流れる風景を見ながら揺られること約20分、最寄りの停留所で下車。東へ数分歩くと「志津屋」の看板が見えてきた。
想像していたよりもコンパクトで、ムダな飾り気がないところがよい。いよいよ入店だ。ゆっくりとドアを開け、足を踏み入れる。なんかドキドキするな。
やはり食べたい「本店限定」商品
入口すぐの場所に置いてあるトレイとトングを手に取り、売場へ。さて何にするか。胃袋の大きさは限られているため念入りに選ぶ。
まずは看板商品の「カルネ」は外せない。志津屋と言えばこの商品であることに、異論を唱える京都人はいないはず。ちなみに私が手に取ったのはいくつか種類があるうちの「京かるね」。次は定番の「元祖ビーフカツサンド」。売場でも売れ筋「第1位」とのPOPが添えてあった。
問題は最後のひとつ。悩みまくっていたところ、ふと目に留まったのが本店限定の「マシュマロチョコカルネ」。あぁ、もうこれしかないとすぐトレイに乗せた。
レジにてアイスコーヒーを注文、スタッフのお姉さんに店内で食べると伝えた。買った商品の説明にはいずれも「温めるとおいしい」と書かれてあった。「温め、お願いできますか」と聞くと、「はい」との答え。後ほど持ってきてくれるとのことで、私は精算を済ませ、席で待機した。
数分後、揃った商品がこれである。いい感じでしょう。
まずは「京かるね」。丸く、かわいらしいフランスパンにマーガリンを塗り、ハムとスライスオニオンを挟んだだけの素朴なパン。そのままガブリとやる。パンはほんのり温かいが、中身はマーガリンが少しなじむぐらいの温度で、具材はややひんやりしている。これは何度食べてもおいしいよな。
次は「元祖ビーフカツサンド」。一切れを手に取り、口に入れた。これは割としっかり温めてある。なるほど、商品のおいしさをもっとも引き出してくれる温度で提供しているのか。いうまでもなく、安定のウマさである。
いよいよ最後は限定商品。写真を見てもらうとわかるが、マシュマロがやや溶けている。しかし頬張ると板チョコはまだ固く、歯応えがまたよいのだ。適切な温度で食べることの楽しさを知ったね。
時々、アイスコーヒーも飲んだが、これも私好みの風味でサイコーである。
わざわざ足を運んだ甲斐があったというものだ。読者の皆さんにも、京都で有名な志津屋のパンを食べてほしい。ただ本店には限定商品があるものの、アクセスはやや不便。しかしご安心を。「カルネ」なら京都駅の売店にも売っているので、見つけたらぜひ食べてほしい。きっと次も食べたくなるはずだ。