格下の後輩相手との対戦ほど緊張することはないものだ。
相手は「胸を借りている」「負けてもともと」と精神的ゆとりを持つことができる。
一方、格上の先輩は、奇襲のような手を使って勝ったところで、試合後には酷評が待っているだけであり、正攻法で勝負するしかないからだ。
そんなことをテニス合宿に向かう車中で話していたところ、なんというめぐりあわせか、友人が2レベル格下の若者と真剣勝負させられることになってしまった。
高校1年生の若者は伸び盛り。昨日よりも今日…試合中にも成長しているような気配を見せていた。
負けたところで失うものは何もないという余裕からか、サービス、ストロークは目いっぱい力強く打ち込み、上級者を後ろに下げたところでドロップショットでかわすという戦法でポイントを重ねていった。
お互いにゲームを取ったり取られたりの状況が続き、試合は、カウント4―4の大接戦になった。
ところが高校生はそこから突然に崩れ始めた。「勝てるかもしれない」と欲が出てしまったか、プレッシャーからか、ミスを連発し始め、自滅でジ・エンド。防戦一方の友人が6-4で辛勝した。
試合後のランチの時間――。
友人は、しばらくの間、廃人の態で箸の運びも重かった。
格下の後輩との対戦とは、それほどプレッシャーがかかるものなのだが、それでも格上の者は勝って、勝負の厳しさを格下の選手に教えてあげなければいけないと思う。
昭和33年に国鉄スワローズ(当時)エースの金田正一選手が鳴り物入りで巨人入りしたスーパールーキー長嶋茂雄選手を開幕戦で4打席4三振に抑えたり、中日ドラゴンズ在籍当時の落合博満選手が平成2年のオールスターゲームで大型新人の野茂英雄選手から本塁打を放ったり、という具合に格下の後輩には厳しい思いをさせなければいけない。
それがひいては業界や社会などの発展につながると考えるからだ。
その意味からすると、昨日のダイキンオーキッドレディスでの三塚優子選手はいたたけなかった。
「ルーキー、開幕戦、初優勝」のプレッシャーから、大事な優勝パットを2回も外した斉藤愛璃選手につきあう格好で自らも優勝阻止パットを外し、斉藤選手に簡単に優勝を献上してしまったからだ。
格上先輩とは、常に追われる身であり、実は厳しいもの――。でも、やっぱり勝たなければいけないから、つらいよなあ。