練習と試合の間には、大きな断絶がある。
練習ではできたことが、試合ではまったくできない。また、練習でできないことは、試合でもできない。
2つの岸辺に横たわるのは緊張だ。緊張という名のプレッシャーが身体から自由を奪い、通常の動きをさせないように作用する。
逆に、緊張感のある試合後の練習は、大きなプレッシャーから解放され、溌剌と思い切りのよいプレーをすることができる。
《あの試合の張りつめた緊張感に比べれば何でもない》と一段上の目線に立つことができるからだ。そして、試合にエントリーして出続け、緊張感を身近なものにすることが実力を発揮できる方法となる。
さて、話は変わって――。
「これからの流通業界をリードしていくのは、東日本大震災で大きな損害を被った企業の中から出てくると思うのです。あの地獄のようなどん底に比べれば、実業は最悪でも倒産すれば済むことであって、生命まで奪ったりはしません。そのように一段上の目線に立つことができるようなイノベーターが現れ、業界を牽引していくのだと思います」。
昨日お会いしたエコス(東京都)の平邦雄社長は、こう語った。
災い転じて福となす。
被災と緊張を同格で扱うことには無理があるかもしれないが、大きな試練は、人間や企業を確実に育てると思いたい。