2011年12月、「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(大阪府/増田宗昭CEO〈最高経営責任者〉)は、旧山手通り沿いの閑静な土地にDAIKANYAMA T-SITEを開業した。かつては水戸徳川家の邸宅があり、その後はノースウエスト航空の社宅となっていた1万2000平方メートルの土地だ。
“真のIT(情報テクノロジー)時代”に必要とされるリアル店舗のひとつの答え、と銘打たれた同物件の総投資額は約40億円。駐車場は120台を備え、区画は本区画4202平方メートルの「代官山 蔦屋書店」と隣接区画で7350平方メートルの「DAIKANYAMA T-SITE GARDEN」に2分される。
まず、「代官山 蔦屋書店」を見てみると、書籍・CD・DVDのマルチパッケージストアにカフェなどを併設している。
書籍では、世界の最新情報が詰まった雑誌を並べた「マガジンストリート」を目抜き通りとして配置し、そこから「人文・文学」「アート」「建築」「クルマ」「料理」という5つの専門書店に分岐するようにレイアウトしている。「このジャンルでは、どこにも負けない品揃え」が売りだ。
DVDの特徴は、「ない映画がない」こと。これまで、DVDになっていなかった名作を 店頭でDVDにして、その場で受け取れるというサービスも提供している。ここでしか手に入らない作品も多数あり、常駐する映画コンシェルジュが勧めてくれる。
CDのセールスポイントは、ジャズ、クラシック、60年代から80年代のロック・ポップスの品揃えだ。音楽のジャンルごとに小さな部屋を用意し、窓辺のカフェエリアでは、コーヒーを飲みながらCDを試聴できる40席がある。
「マガジンアーカイブ&カフェ Anjin」は、座席数120席、蔵書約3万冊。『平凡パンチ』誌、『太陽』誌、『装苑』誌など懐かしの雑誌や『domus』誌、『VOGUE』誌など海外雑誌と選ばれた書物とアートに囲まれた空間で、珈琲やアルコール、食事を楽しみながら読むことができる。ライブラリーの閲覧のほか、蔦屋書店の書籍をここで持ち込み読むことも可能だ。
また、「文具」や「トラベルカウンター T-TRAVEL」を設置。「スターバックス コーヒー」「ファミリーマート」も店舗を構える。
一方の「DAIKANYAMA T-SITE GARDEN」内には、散歩道を走らせ、独立した低層の専門店群を配置した。
ペットショップの「GREEN DOG代官山」、輸入玩具&キッズサービスの「ボーネルンド 代官山店」、多目的スペースの「GARDEN GALLERY」、電動アシスト自転車専門店の「代官山 Motovelo(モトベロ)」、カメラ店の「代官山 北村写真機店」、クリニック&エステの「松倉 HEBE DAIKANYAMA」、カフェバー・ダイニング「IVY PLACE(アイヴィープレイス)」と特色のある専門店が店を構えている。
『代官山 オトナ TSUTAYA 計画』(増田宗昭著:復刊ドットコム刊)によれば、DAIKANYAMA T-SITEの目的は、プレミアムエイジへのライフスタイルの提案だ。プレミアムエイジとは、1946年~1954年生まれの人々である。
「現在60歳前後の団塊の世代の人々が顧客として魅力的なのは、経済的余裕と時間的余裕を有しているから、というだけでは決してない。この世代の人々が30年前、生活のファッション化という変革を担った主体であることを忘れてはならないだろう」
「定年後の生活を“余生”と位置づけるような世代とは違う。いわば従来の像を壊していく存在、“大人を変える大人”ともいうべき人が、ここには多く含まれているのだ。私はこうした、団塊の世代を中心とした50歳~65歳の、“大人を変える大人”のことを、“プレミアムエイジ”と呼んでいる」
開業以来、多くの人々が詰めかけ、プレミアムエイジはもちろん、この層に憧れる多くの若者が朝の早い時間からカフェの席に陣取り、知的欲求を満たしている。
増田CEOが創りたいと願ってやまない“知のストレージ”が新しい文化創造の入り口になるかどうか。カルチュア・コンビニエンス・クラブの大いなる実験に注目したい。
<アクセス方法>
DAIKANYAMA T-SITE
住所:東京都渋谷区猿楽町17-5
東急東横線「代官山駅」より徒歩5分