UCC上島珈琲(兵庫県)の上島達司会長とご一緒する機会があった。周囲には同社社員が5人。彼らに向けて、唐突に飛び出すのは、「『学生の日』ってあったっけ?」という質問だ。
日本記念日協会(長野県/加瀬清志代表)によれば、本日1月25日が「菅公学生服の日」なのだが、そんなことは知る由もない社員は、しどろもどろの状態になる。
すかさず「『学生の日』とはちょっとずれますけど、以前、学生を対象に『珈琲を飲み始めたのはいつか?』と調査したところ、勉強が忙しくなる中学・高校生のころという答えが圧倒的だったんです」と外部の助け舟が飛ぶ。
「じゃあ、《勉強のできる珈琲》《試験に受かる珈琲》という商品はできないか? 中学入試はインスタント、高校入試はレギュラーだ」と上島会長。
「しかしそれは競合企業のネスレ日本(兵庫県/高岡浩三社長)さんの得手とするところです。キットカットを軸にインスタントコーヒーも絡めて受験生を応援しています」と社員は切り返す。
「そうだよな。そうそう、いまの販売方法も面白くないな。大量陳列コンテストなら、昔一生懸命やってたモミジの葉っぱを使ったデコレーションなんて斬新だよな。かつての流行は、また10年もすると繰り返すものだ。原点回帰することも大事なんじゃないか? ただしその時はセンスアップを忘れないように」。
「はい。検討してみます」。
「そうだ。引退した島田紳介さんを招いて〈大量陳列しゃべくりコンテスト〉なんてどうだ?」
「えっ、何ですか? それは…?」
この間、5分ほど。わずかな時間も惜しむように、上島会長からは、盛りだくさんのアイデアが出される。
社員にとっては、ひとつひとつが宿題となり、気の毒とも感じてしまうが、部外者としては感心至極である。
いつも何かを考え、新しいビジネスを探ろうとする73歳の上島会長に商売への執念を見た。