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京風ラーメンの聖地! 天下一品1号店で楽しむ「総本店限定」メニュー

「京風ラーメン」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか。薄味で、澄んだスープを思い浮かべるかも知れないが、違う。濃度が高く、しっかりとした味つけの一杯を出す店が多く、実際に好まれるのだ。今回はその代表格で、京都が誇るラーメンチェーン「天下一品」の1号店を訪れた。

「天下一品総本店」は、ファンにとっては「聖地」のような存在

創業者が大切にした言葉

 京都市中心部のビジネス街、四条烏丸から市バスで約30分。閑静な住宅地が広がる左京区の北白川通り沿いに店はある。京都を代表するラーメンチェーンの「天下一品総本店」だ。

閑静な住宅地が広がる左京区の北白川通り沿いに店はある

 スープは「こってり」と表現され、たとえ目を閉じて食べても、どこの店かを言い当てることができるほど強烈な個性を持つ。その1号店は、熱狂的なファンには「聖地」のような存在。地元からはもちろん、わざわざ他府県、さらに海外からもやってくる。

 天下一品は、創業者の木村勉氏が1971年11月、ラーメン屋を始めたのが起こり。勤めていた画廊が経営破綻したことを受け、限られた資金で開業できる屋台でのスタートを選択する。

 当初は普通のしょうゆラーメンを提供していたが、それでは数ある競争相手に勝てないと、独自の味を追求し始めた。試行錯誤を繰り返し、数年かけ、鶏ガラベースのスープに大量の野菜を使った、こってりラーメンを完成させる。

 もう随分前、私はこの創業ストーリーを、某ビジネス系のWebサイトにアップされていた木村氏のインタビュー動画で知った。また印象深かったのは、同氏が仕事をする上で「正しい努力」という言葉を大切にしている、と話していたことである。

 いくら汗を流しても、的外れでは結果が出ない。何事も、目標達成のためには適切な行動をとらなければムダである。そういった内容の話で、成功ノウハウの至言だと強く感銘を受けたのを覚えている。

 さて夏のある日、私は総本店の前にいた。入口横には、「昭和四十六年創業 総本店」と記された木製の看板が掛かっている。何てことのない店構えだけど、どことなく貫禄を感じた。

どことなく貫禄を感じる店構えの総本店
スタッフが着用するユニフォームの背中には「KOTTERI 50」の文字。おそらく創業50周年を記念しつくったのだろう

 ここは50年数年前、木村氏が屋台を営業していた場所である。石材店を営む知人の好意により、空き地になっていた場所を使わせてもらったのだという。商いが軌道に乗って後、常設店として出したのが現在の総本店である。

 当時の様子に思いを馳せながら、店内へ入った。

こってり、ニンニク入りをいただく

 昼前の時間にもかかわらず、満員に近かった。それでも待つことなく、入口すぐのカウンター席に座ることができたのはラッキーだった。

 さて何を食べるか。

 メニューを開いて真剣に検討した後、最終的に決めたのは「温玉豚重定食」(税込1650円)。なんと総本店「限定」である。「聖地」に来て、「限定」をいただく。これほどの贅沢がほかにあろうか。

 周囲を見渡すと、地元の人らしき男性の一人客、カップル、また夏休みだからか、子供を連れたファミリーなど、お客は多様である。わいわいがやがや、活気を感じる。

 壁面には、「天下一品グループ 沿革」と題した年表が見えた。創業から会社設立、フランチャイズ展開開始、50店舗、100店舗達成など、成功の歴史を確認できる。

総本店「限定」の「温玉豚重定食」(税込1650円)を注文した
壁面には、「天下一品グループ 沿革」と題した年表が見えた

 さらに店の奥には、若き日の木村氏の写真、そして毛筆で書かれた「正しい努力」の文字。あぁ、これですよ、これ。象徴的な店の目立つ場所に、この言葉を掲げるとは、創業者は成功すべくして成功したのだと感じたね。

店の奥に掲げられた「正しい努力」。美しい文字だ

 そして私の目の前に定食が置かれた──。もちろんラーメンは、こってりスープ、ニンニク入りである。

私の目の前に置かれた定食がこれだ

 まずはスープから。レンゲに少量をすくって口へ。うん、おいしい!

 天下一品の店舗数は7月下旬現在、東北から沖縄まで221店舗ある。その中、私が今食べているのは、全店舗が“お手本”にする一杯だと考えると感激もひとしおである。スープに続き、麺もいただいたが、最高であるのはいうまでもない。

まずはスープから。レンゲに少量をすくって口へ。うん、おいしい!「こってり」のほか「あっさり」「屋台の味」など、いくつかの種類から選べる

 次に豚丼。普通の定食なら、主役だろうが、ここでは脇役。とはいえ食べるとおいしく、幸せな気持ちになった。

脇役の豚丼もおいしかった

 すべてを平らげた私は満腹になり、しばらく動けなかった。空になったラーメンの鉢に視線を落とすと「明日もお待ちしてます。」との文字。スープが少なくなると、このメッセージが現れる仕掛けになっているのだ。

 大変満足だった。私はぼんやりと「正しい努力」について考えながら、帰りのバスに乗った。