京都の商店街といえば「錦市場」が有名だ。しかし、ここ「京都三条会商店街」も、なかなかの魅力がある。全長800mにおよぶ長いアーケード、さらにイベントの開催にも力を入れるなど、見どころは満載。今回、おいしい飲食店も多く入っている地域密着型の商店街に足を運び、食事をした。
金メダリストがここで練習
京都における主要道のひとつ、三条通──。東は堀川通から西は千本通へと続く、市内最大級の商店街が「京都三条会商店街」である。
全長800mの長いアーケードを備えているため、雨の日でも快適に買い物ができる。キャッチフレーズは「365日晴れの街」。アテネ五輪(2004年開催)の女子マラソンで金メダルを獲得した野口みずきさんが、選手時代に練習した場所だったというのは地元ではよく知られている。
商店街が産声を上げたのは1914年、商家72軒が集まって「三条会」を組織したのが起り。以来、今日まで約110年近い長い歴史がある。
地域密着型運営でファンが多い京都三条会商店街だが、一時は苦難の時期を経験している。
最盛期は1970年代半ばで、約250店舗が営業していた。しかし大型店の台頭や、後継者難などを背景に閉店が相次ぎ、2000年初頭には160店舗台にまで激減する。
危機感を募らせた組合員が奮起して結束、また若手経営者が中心となって進めた活性化策が功を奏した。とくに効果的だったのはイベントの開催だ。かつてはお中元とお歳暮の時期に催す、年2回の売り出しセールだけだった。これをメーカーと連携した「ビール祭り」、一角にある公園で開催する「移動動物園」、地元の大学と連携した「お化け屋敷」など、ユニークな企画を月2〜3回打つようになった。
一連の取り組みによって徐々に活気が戻り、通行人数は数年間で約1.5倍も増加した。また店舗数も190台にまで回復。なかには人気店が、あえて出店先として選ぶケースも出ている。この3年はコロナ禍でイベントは控えていたものの、今も賑わいを見せる。
実は京都三条会商店街には、おいしい飲食店も多い。精肉店が経営する焼肉店、創作中華料理店、また海鮮屋台風の居酒屋と、どの店に行くか目移りがする。京都に来たら、食べ歩きをするのもよいのではないかと思う。
その中で今回、紹介するのは、うどん・そばの「田舎亭」。創業は明治43年(1910年)なので、商店街より古い。麺類のほか各種定食が充実しており、私もたまに利用している。
では早速入店してみよう。
細いがしっかりとした歯応えのそば
私が足を運んだのは12時過ぎのランチタイム。すでに満員だったが、あまり待たずに席を案内された。多くのお客は食べたらすぐに店を出ていくため、回転がよいのだ。
メニューに一通り目を通したのち、「厚切り炙りチャーシューのつけそば」(税込1000円)を頼む。「京都三条田舎亭名物」とあるのが目を引いた。なお、そばは2玉に増量しても同じ価格であるのは良心的。せっかくだからと私は1.5玉にしてもらった。
待つ間、周囲を観察する。近所のおじさん風、サラリーマン風、観光客風と客層は多様である。しかし皆、気取らない服装で来店している点で共通しており、普段使いの店として親しまれていることがわかる。
待つこと約10分、注文した料理が目の前に置かれた。どうです、いい感じでしょう。
まず「そば」の実力を試す。メニューにあった解説によれば、「北海道美瑛産石臼挽き蕎麦粉を使用、歯ごたえ、風味を生かした麺になってます」とある。なので、最初は、テーブルにある塩を少しかけて味わった。細麺ながらしっかりとした歯ごたえ、確かに風味がよく、私の好みである。
次は、汁につけ、頬張る。あぁ、これはおいしいわ。やや塩気が強いが、つけ方を加減すればちょうどよい味になる。箸が止まらず、どんどん食べ進む。
つけ汁には厚いチャーシューが入っている。少し食べた後、そば、またチャーシューと変化をつけながら楽しんだ。
そばを完食。だが楽しみはまだ残っている。定食には、少量のごはんがついているのだが、残ったつけ汁をかけていただくのが正しい食べ方。私はそこに、同じくつけ汁に入っていたゆで卵、そして残りのチャーシューを入れて〆た次第である。
もうお腹はいっぱいである。私は幸せな気持ちで、田舎亭、そして商店街を後にした。なお店から数分には、坂本龍馬と妻、おりょうにとって、縁結びの神社となった武信稲荷神社もあるので、立ち寄ってみるのもいいだろう。