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検証! 大阪・西成の安宿はビジネスの出張に使えるのか?

日雇い労働者の街、大阪西成──。少々、ワイルドな雰囲気が漂うものの、物価は安く、B級グルメも楽しめるとあり、最近はYouTuberや雑誌などに取り上げられる機会が増えている。そんな西成には驚きの価格で利用できる宿泊施設も多い。今回は、京都からわずか1時間にある安宿に泊まる番外編企画である。題して「大阪・西成の安宿は出張に使えるのか?」。

大阪西成の「あいりん地区」にあるビジネスホテル加賀。宿泊料は安いが、女性や観光客の利用客が多かった

大阪中心部から好アクセス、楽天トラベルで予約可能!

 10個入りたこ焼き200円、かけうどん1杯170円、自販機の缶コーヒー50円。これらはすべて2023年6月現在、西成エリア周辺で売られているモノの価格だ。

自販機の缶コーヒーは50円
西成と隣接する新世界エリアにあるうどん店では、かけうどんは170円

 私は普段、ビジネス誌向けの記事を執筆している。昨今、経営を取り巻く環境の悪化については、人件費や燃料費はじめ各種コストの高騰、商品の値上げについてまず触れることが多い。しかし、あらためて上記の価格を見ると、ウクライナ危機、物流の2024年問題の影響なんてどこ吹く風、まったく受けていないかのような水準である。

 日雇い労働者が多く、かつては日本で唯一、暴動が起きる場所として知られた西成。だが労働者の高齢化や大阪市の「西成特区構想」、また新世界はじめ隣接エリアが観光地として注目を集めていることなどを背景に街の様子、イメージは確実に変化している。近年は外国人を含む観光客、また若者の姿も目立つ。

 これらを受け、私は「西成にある安宿は、出張に使えるのではないか」と思いついた。理由は安さだけではなく、交通アクセスのよさもある。新幹線で大阪に来た場合、地下鉄に乗れば「新大阪」駅から西成へ最寄りの「動物園前」駅まで約20分。企業の事務所が多い梅田からも10数分。また関西空港からは「新今宮」駅まで南海電鉄1本で来ることができる。

 仮説を検証するため、私は現地へ出向き、宿泊してみることにした。

 さてどの施設を利用するか。なお私が西成を訪れるのは、今回が初めてだ。入念に検索した末、最終的に選択したのは「ビジネスホテル加賀」。簡易宿所が集積する「あいりん地区」の一角にあり、安宿の立地としては申し分ないと考えた。

宿泊した「ビジネスホテル加賀」。公式サイトを見ると、女性限定プランも提供、さらに英語、中国語、韓国語でも表記し、新しい客層を取り込もうとする姿勢を感じる

 ただ安いといっても、これまで一般的なホテルに宿泊してきた人が違和感を持つほどの、施設やサービス上の“落差”があってはいけない。価格とのバランスで、納得できる範囲での落とし所を探った結果がこの宿だった。公式Webサイトがあり、Twitterで情報発信している点がよいと思った。

 申込時、キャンペーン期間中だったことも私の目を引いた。今年8月で開業39周年を迎えるのを記念し、1泊390円の割引を実施していたのだ。期間は6月末までとのことで、楽天トラベルを通じて予約した。

備え付けのテーブルで原稿を書く

 6月下旬某日、私は、ビジネスホテル加賀の前に立っていた。入口すぐの受付で、チェックインの手続きを一通り済ませ、請求された宿泊料は1510円──。クレジットカードで決済したが、冷静に考えると、この価格、スゴクないですか。

 驚くのはまだ早い。サービスで、近くにある銭湯の入浴券をつけてくれるのだ。経営している会社が同じとの説明だったが、普通に利用すれば大人料金は490円なので、実質1000円ちょっとで宿泊できることになる。

 館内は土足厳禁で、これは西成のホテル“あるある”だ。玄関でスリッパに履き替え、靴を手に部屋へ移動するシステムになっている。各部屋の扉は鉄製で、旧式の集合住宅のようである。

館内は土足厳禁で、これは西成のホテル“あるある”。玄関でスリッパに履き替え、靴は部屋まで持って行くシステムだ
各部屋の扉は鉄製で、旧式の集合住宅のようだ

 渡された鍵を使い、いよいよ入室する。私の部屋は和室で、畳が縦横に組み合わせてあり広さは3畳。部屋にある設備は、エアコン、テレビ、そして折りたたみ式の小さなテーブルが1台置いてある。やや狭い感じはするが、くつろいで寝るだけならこれで十分だと前向きに解釈する。

館内は土足厳禁で、これは西成のホテル“あるある”。玄関でスリッパに履き替え、靴は部屋まで持って行くシステムだ

 そうそう全館でWi-Fiが使えるため、パソコンを持参すれば仕事ができる。私はこの部屋で急ぎの原稿を書いたが、結構捗ったことを記しておく。

全館でWi-Fiが使えるため、パソコンを持参すれば仕事ができる。私はこの部屋で急ぎの原稿を書いたが、結構捗った。ただ私の部屋はたまに電波が不安定だったことはつけ加えておく

 客層だが、館内を歩いた印象では、いかにも労働者のおじさんという人は見かけず、観光客が多い感じだった。

 ホテルの公式サイトを見ると、女性限定プランも提供、さらに英語、中国語、韓国語でも表記し、新しい客層を積極的に取り込もうとする姿勢を感じる。実際、利用につながっており、館内で20代後半から30代前半の女性がうろうろしているのを複数見た。

 チェックインは12時で、チェックアウトは10時。中でもチェックインの時間設定が気に入った。早めに着き、荷物を置いて外出するのもいい。ちなみに私は夕方4時に入り、その後、すぐに街へ繰り出し、ホルモン屋とか居酒屋を回って、一人でかなり楽しんだ。これについてはこの記事の続編を読んでほしい。

 肝心なのは布団。当然のことながら清潔で、嫌な感じはしなかった。朝までぐっすり寝られて快適だった。

奥から入口側を見たところ。各室にエアコン、テレビが備え付けられている。フロントに申し出れば、ドライヤーや延長コードなどを無料で貸してくれる

 いや、西成のホテル悪くないですよ。和室が気になるという人は、少し広くて“高級”な洋室を選ぶといいだろう。といっても4.5畳、2200円である。

窓からの風景

 総じて施設は老朽化しているものの、大浴場(男性専用)、シャワールームはきちんと掃除されており、普通に使用するにはまったく問題がない。なお銭湯へは、翌朝に行った。昨年8月、リニューアルしたとのことで、経営への意気込みを感じた。

 結論は、大阪西成の安宿は出張で使うことができる。理由をおさらいをすれば、交通アクセスに優れるほか、安いため、会社の経費に優しい。館内はWi-Fiが使え、部屋には仕事ができるテーブルも用意されている。また近くには魅力的な飲食店がたくさんある。これ以上、何が必要と言うのだろうか。

 いろいろ論じたが、宿泊代がびっくりするほど安いので、「西成の宿に泊まってきた」というだけでも話のネタになり十分に元が取れるだろう。