よく警察のお世話になる。
警察と言っても、悪いことをしているわけではなく、お世話になっているのは、「交番」だ。
取材で見知らぬ街を訪れたときなどは、訪問先の方角を確認するために道を尋ねる――。
非常に重宝する機能であり、税金を払っていてよかったと実感できる一時だ。
中堅規模以上の駅前には、たいてい「交番」はあるものだ。
しかし、「交番」がない場合はどうしているか?
飛び込むのは、酒屋さん、お米屋さん、クリーニング屋さん薬屋さん、など古くから、その街に店を構えているような個人商店だ。配達をしていることもあり、街の隅々を熟知している。しかも、私のような行きずりの訪問者にもやさしく道を教えてくれるから本当にありがたい。
そんな風に、道を尋ねるに当たっては、「交番」や個人商店をすっかり当てにしてしまっている。
その半面で、道を聞く際に選択肢として決して思い浮かばないのは、コンビニエンスストアや食品スーパー、GMS(総合スーパー)、ホームセンターだ。
通いの従業員が多く店舗周辺を熟知しているようには思えないし、何かいつも忙しそうにしているので尋ねるのが憚れるし、第一、予期せぬ訪問者に対してはどこかやさしくないイメージがある。実際に、これまで一度して、道を尋ねたことはない。
さて、ここにきて、地域密着を謳う小売企業が増えている。
“地縁ストア”として全国規模で店舗展開するチェーン企業との差別化を図ろうという動きだ。
冠婚葬祭時の特別な必需品や街にある学校の行事、地元オリジナルの総菜を調べ品揃えしたり、地元の生産者から生鮮三品を仕入れ、売場でも「地産地消」を大きく打ち出している。
けれども、地域密着とは、単に地元のニーズを把握して品揃えすればいいということではないだろう。
道案内などで当てにされ、何の得にもならないサービスを嫌がることなく提供できることも、地域密着を語る上で大切な条件の1つなのだと思う。