以下は、2000年以降に、ユニクロについて書いた私の日記である。ちょっと長いが、我慢して読んでいただきたい。
●2000年5月12日
結婚披露宴で隣合わせた中年男性が唐突に言った。
「ユニクロって助かるよね」。
ほろ酔いの彼曰く。「中高生のチビ達にオシャレさせてやりたいが、これまでは高すぎて1年に何着も買ってあげられなかった。でもユニクロならTシャツは1000円だもの」。
「あいててよかった!」で一世風靡。いまなお、快進撃を続けるはセブン‐イレブンだ。これも「あいていて助かった」の意味だろう。
転じてホームセンター。いま消費者から「助かった」と評価され、安堵せしめる店舗はどのくらい存在するのか?
逆にそれを追求していくことがホームセンターの次の成長につながるだろう。
●2002年8月22日
買い物カゴに目いっぱい商品を詰め込むお客を目にする。
「本当に大丈夫かな?」と思う。
確かに安い。
だが10枚のシャツを消費するには最低3年はかかるのではないか。そう考えると、ユニクロの商売は潜在需要の先食いでタンス在庫を増やしているだけのような気がする。
しかも、お客は「Tシャツ=1000円」の低価格に慣れ始めるだろう。
ユニクロには模倣すべき次のビジネスモデルもない。
いま、ユニクロは絶好調なのだけれども、柳井正社長は案外、苦しんでいるのではないだろうか?
●2005年7月20日
地が滑るような勢いで落ちていく業績に歯止めを掛けることはたやすいことではない。
その上、業績をV字に回復させるとなれば、なおさらだ。
ファーストリテイリングの玉塚元一社長は、“フリース景気”以降のユニクロの凋落にストップをかけた“中興の祖”。だが、この8月末で同社を去ることになった。
目標とする売上高4000億円の奪回ができなかったことが最大の原因とされている。
しかし「普通の企業」ならリベンジマッチのチャンスが与えられたに違いない。
今回の人事発表に触れ、創業者(オーナー)で社長に復帰する柳井正氏の掲げる「経営者十戒」を改めて読んでみた。
「経営者は、(1)何が何でも結果を出せ。(2)明確な方針を示し、首尾一貫せよ。(3)高い理想を持ち、現実を直視せよ。(4)常識に囚われず、柔軟に対処せよ。(5)誰よりも熱心に、自分の仕事をせよ。(6)鬼にも仏にもなり、部下を徹底的に鍛え勇気づけよ。(7)ハエタタキにならず、本質的な問題解決をせよ。(8)リスクを読み切り、果敢に挑戦せよ。(9)ビジョンを示し、将来をつかみ取れ。(10)素直な気持ちで、即実行せよ」。
非常に厳しい戒めが並ぶ。
そして、柳井氏の目標は売上高1兆円と遙か彼方にある。
同世代である玉塚社長には同情したい。
だが、ユニクロを日本最大のアパレル専門店チェーンにした原動力は「普通の企業」ではない厳しさにあることも事実だ。
私が日記をつけていたその時々に当の柳井正ファーストリテイリング(山口県)会長兼社長がどんなことを考えていたのかを述懐しているのが『成功は一日で捨て去れ』(新潮社刊:1400円<税別>)である。
前著『一勝九敗』以降、6年ぶりの発刊。ページを進めていくうちに、私の推測が当たっているところ、まったく見当違いなところなどが明確になり、大変興味深く、読むことができた。
本ブログの読者のみなさんも、それぞれに「ユニクロ観」をお持ちのことと思うが、ぜひ一読され、筆者との間にあるギャップを埋めてみていただきたい。