ユニクロは、2009年秋冬物でも、吸湿発熱素材の「ヒートテック」を全面に押し出し強化している。売場では、「ヒートテック」の新商品がきらきらと輝いている。
発熱性、保温性、抗菌性、ストレッチ性、吸汗速乾性、静電気防止、形状保持といった特徴は、確かに納得のいくもの。またクールネックT(半袖)の1000円は実にリーズナブル。2008年には2800万枚を売り切った。
ユニクロの動きに呼応するように、イオンでは機能性インナーの「ヒートファクト」で対抗。1000店舗で展開するとともに、対2008年比の約4倍となる1000万枚の売上目標を打ち出した。
イトーヨーカ堂も負けてはいない。機能性肌着の「パワー ウォーム」をイトーヨーカドー165店舗で発売し、2008年比2.5倍の250万枚の販売を計画する。
対抗する2社は、ユニクロより低価格。テレビやラジオのコマーシャルなどにも力を入れ、徹底訴求している。
そして、こんな様子を見ていると1980年代後半に起こったビールの“ドライ戦争”を思い出してしまう。アサヒビールが「スーパードライ」を発売して、ビール業界のシェアが大きく変わるほどの大ヒットになるにしたがい、同業他社が一斉にドライビールを発売し、後を追いかけた。
同業他社には、(1)ドライビールマーケットにまだ参入する余地が残っていると判断したこと、(2)消費者の選択肢を増やすことで「スーパードライ」への一極集中にストップをかけること、という2つの思惑があったのではないかと考えられる。
しかしながら、同業他社は揃って、大惨敗。自社の「ドライビール」の宣伝をすると「スーパードライ」の売上が上がってしまうという泣くに泣けない、笑うに笑えないような現象まで起こった。
はたして、“ドライ戦争”とは異なり、2社の巻き返しは成功するのか?
「新たな潜在需要を見つけ顕在化することがわれわれの仕事だ」と柳井正ユニクロ社長はことあるごとに話しているが、成功者の後追いは、この考え方とは真逆であることだけは間違いない。