「なんだそれだけ」。
と言われてしまうくらい、アイデアというのはあっけないものだ。
しかし、実は、その発想に行きつくまでには、大変な苦労を経てきている。
ところが、不思議なことに、日本の企業では、一般的に、突拍子もない凄いアイデアを出した人間よりも、それを受け、具現化した人間が高く評価される傾向にある。
良いアイデアであればあるほど、分厚い企画書など不要であり短文で示すことができるので、つい軽視されてしまうからなのだろう。
クリストファー・コロンブスは、居合わせた人たちに「生卵をテーブルに立てられることができますか?」と尋ね、誰も出来ないことを確認した後、軽く卵の先を割ってから机に立てた。「それなら誰でも出来る」と怒声を飛ばす人々に対し、コロンブスは「人のした後なら何とでもいえるだろう」と返した――。
有名な“コロンブスの卵”である。
アイデアとはまさに“コロンブスの卵”のことである。
あとから見れば、実に他愛ないものでしかないことが多い。
けれども、アイデアは、マーケティングやイノベーションの起点である。
「この商品を法人に売ろう」「容器の穴を大きくしよう」「10分1000円の床屋」「ちゃんと貼れない付箋」「商品を客にレジまで運ばせる」…。
ほらね。
たった1言かもしれないが、そこに数十億円の価値があるものも少なくないことが分かるだろう。