食品小売業は、農業の参入に積極的だ。
イトーヨーカ堂(東京都/亀井淳社長)は、2008年8月、農業生産法人・セブンファーム富里(千葉県/戸井和久社長)を設立して農業参入を果たした。
2009年7月には、イオン(千葉県/岡田元也社長)がイオンアグリ創造(千葉県/藤井滋生社長)を設立。合理的な農業への挑戦をスタートさせている。
同じ年の10月には東急ストア(東京都/木下雄治社長)が社員2人と神奈川県内の農業生産者が一緒になって農産物を生産する「神奈川農園」を開設した。さかのぼる2008年3月には「茨城農園」を開いており、生産物の供給が追い付かないほどの好評を博している。
神戸物産(兵庫県/沼田昭二社長)は、エジプトに約3000ヘクタール(東京ドーム約670個分)の土地確保計画。また、北海道では約600ヘクタールを確保し、農業事業「地産地工」を行っている。
地産地工とは、神戸物産の造語で、自社の農園(土地の確保)で農作物を栽培し(農薬管理)、自社工場で加工し、原材料の生産から商品の加工・製造までを行い、自社輸入して同社がフランチャイズ展開する「業務スーパー」やデリスタイルマーケットの「Greens K」で販売するというものだ。除草剤を極力使わず、低農薬で安全安心を担保したオーガニック農業を志向する。
それだけではない。
ワタミ(東京都/桑原豊社長)、サイゼリア(埼玉県/堀埜一成社長)、阪急阪神百貨店(大阪府/新田信昭社長)、モスバーガー(東京都/櫻田厚社長)など外食産業や百貨店など過去10年にわたって続々と農業参入を果たしている。
参入理由は企業ごとに様々だが、①食糧調達への危機意識、②商品政策上の差別化、③社員の知識向上、④2012年施行の改正食品リサイクル法への対応などを挙げることができる。
食品小売業の農業参入は、ひとつのブームになっていると言っていいだろう。