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ビールは冷やして売らなくとも

 子供のころ、酒屋に使いに行って、瓶ビールを注文すると、「冷えたの? 冷えてないの?」と聞かれたものだ。冷えたビールを頼むと、“冷やし料”として5円を別に取られた。

 「冷やす」というのは、おカネがかかることだったのだ。

 

 ところがいつの間にやら、“サービス”という名のもとに、まず ちょっと遠くにあった1軒の酒屋が無料化。すると、次に自宅そばの酒屋、さらには周辺にあった酒屋が追従――。“冷やし料”はどこも取らなくなった。

 

 やがて酒屋がコンビニエンスストアに業態転換すると、ビールのみならず、いろいろな商品を無料で冷やして提供するのが当たり前になった。

 

 この間、1998年ごろから酒販免許の規制緩和が進み、2001年1月には販売店間に一定の距離を置く「距離基準」が廃止になった。2003年9月には地域ごとに人口当たりの免許枠を定めていた「人口基準」もなくなった。さらに2006年9月には既存業者を保護する「緊急調整地域」の指定もなくなり、実質的には完全な自由化となった。

 

 それ以降、全店舗で酒類を扱えるようになった食品スーパーもタダで商品を冷やし続けている。

 

 そこにどれだけの電力が注ぎ込まれていたのかは定かではないが、消費者が求め、小売業が対応した結果であることは間違いない。

 

 しかし、今回の電力量不足の事態で、状況は大きく変化した。

 

 店内を冷静に見回せば、冷やして提供しないでも済むのに、冷やしている商品は多々ある。ビールもそんな1品だ。帰宅後、すぐに飲む人以外は、普及率ほぼ100%の家庭の冷蔵庫で冷やせばよい。

 

 このように、冷やさなければならない商品、冷やした方がよい商品、冷やさなくてもよい商品と区分して最低ラインを明確にすれば、使用電力量はずいぶん抑制できるだろう。

 

 実際に、食品スーパーマーケットの原信(新潟県/原和彦社長)紫竹山店は、照明の一部停止や暖房停止などで、電力量を対前年比50%削減に成功したと発表している。

 

 ここは流通業界が一致団結して、知恵を絞るところである。