バリバリと仕事に励んできた“団塊の世代”やモーレツ社員も、次々と還暦を迎え、だんだんと会社から離れていくことになる。そろそろ、定年後の人生を真剣に考え始めているという方もいらっしゃるのではないだろうか。
でも、あまりに一生懸命働きすぎたことが災いして、「自分-仕事=ゼロ」という方も案外少なくないのでは?
イオンのニ木英徳名誉相談役は、そんな“仕事一筋人間”を前にこう説いている。
「あんた、このままいくと定年後にはおかしくなって死んでしまうよ。死にたくなかったら、在職中に次の目標を持ちなさい」。
不思議なもので、新しい目標を持ち、達成に専心していると、今抱えている仕事の魅力はだんだんと萎んでいくという。
実は、二木さんも、イオンの社長などを経て、名誉相談役に就き、実務から離れるに際しては胸が苦しくなるほどに悩んだ。
大好きだった実務がご法度となれば、もはや社内では引退同然だからだ。実際に名誉相談役というのは、その名の通りの名誉職――。
どうしたか?
2004年のアテネ五輪で日本男子が体操(団体)で29年ぶりに金メダルを獲得。2008年の北京五輪でも、内村航平が個人総合で銀メダル、男子団体総合でも銀メダルを獲得。さらに今月開催された世界体操競技選手権(@ロンドン)において、男子では内村航平が個人総合で金メダル、平行棒で田中和仁が銅メダルを獲得。女子では鶴見虹子が個人総合で銅メダル、段違い平行棒で銀メダルを獲得したことは記憶に新しい。
その表彰式で、選手たちに隠れる形で破顔一笑、万歳していたのは、二木さんだ。
そう、二木さんは、実務を離れた際に、次の目標を日本体操の普及、発展に据えたのだ。
もちろんゼロからのスタート。いまは日本体操協会会長、日本新体操連盟会会長の要職にあり、3年後のロンドン五輪での金メダル奪取を夢見ている。