「死せる孔明生ける仲達を走らす」。五丈原の戦場で死んだ蜀の諸葛亮孔明が生きている魏の将軍司馬懿仲達(しばいちゅうたつ)を退却させたことから、転じて、優れた人物は死んでもなお生前の威力が残っていることを意味する。
最近、つくづく「凄い!」と感じるのは、ダイエーOBOGの流通業界での活躍ぶりだ。カスミの小浜裕正社長、クリエイトエス・ディーの若尾鐵志郎社長、大黒天物産の佐々木桂一副社長、ファンケルの宮島和美会長…と錚々たる顔ぶれ。ダイエーの外に出てからというもの、個性的な経営で異彩を放っている。
“野武士集団”と評された彼らの本領発揮ともいえるところだが、いまでは“孤高”という感じはなく、OBOG間のネットワークも強固だ。
もうひとり。同じダイエーグループ内のビッグ・エーの上高正典社長も忘れてはならない。ハイパーマート事業の敗戦処理、ニコニコ堂のリストラに関わった後、2002年から現職に。“レイムダック”(縛られたアヒル)のような状態でもめげずに改革を進め、2008年度まで7年連続で既存店を成長させるなど「リミテッド・アソートメント・ストア」をビジネスとして完全に軌道に乗せた。
現在は150坪型“ハードディスカウンター”の確立に向けて奮闘中。古き良きダイエーの姿はビッグ・エーにあるといって過言ではない。
死せる中内功氏の遺伝子は流通業界に脈々と受け継がれている。
『チェーンストアエイジ』誌2009年8月1日・15日合併号