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いずれにしても「渥美理論」は学んだ方がよい

 「チェーンストア理論」とは、渥美俊一日本リテイリングセンターチーフコンサルタントの代名詞だ。ただ、渥美先生は、「自分で発明した理論は少ない」といたって謙虚だ。米国で学んだ先例を理論体系として整備して、米国以外の理論を付加することで、いまの形になったという。

 

 では、「渥美理論」以外に「チェーンストア理論」があるのかといえば、これだけ体系的にまとめられたものは寡聞にして私は知らない。

 

 「渥美理論」を部分的に否定することで、構築された「チェーンストア理論」というのも散見できるが、「アンチ渥美理論」は「渥美理論」なしには構築できなかったということになる。

 

 『チェーンストアエイジ』誌で連載されている渥美俊一評伝の『革命一代』(樽谷哲也作)は、信奉者として名前を連ねている中内功さん、伊藤雅俊さん、岡田卓也さんなどの錚々たるメンバーと渥美先生の位置関係がよく描けていて面白い。

 また、信奉者とは名乗らないものの、7&アイ・ホールディングスの鈴木敏文さんやファーストリテイリングの柳井正さんも「渥美理論」を学んだ形跡が各所に見られ、優良流通業の“軍師”として私淑されてきたのだろう。

 

 かといって、チェーンストアを志す起業家すべてが「渥美理論」を学ぶ必要はないと思う。

 「渥美理論」を覆すだけ、学習を繰り返し、闘争心を持ち、知らないことで潰れても構わないという覚悟があれば、それは起業家の信念であるし、全く問題ない。

 実際、「渥美理論」に対する毀誉褒貶はこの47年間途絶えたことがない。

 しかし、日本で商売をする限り、「渥美理論」信奉者と、必ずどこかで競争することが予想されるのだから、「敵の理論とはどんなものか」を知っておいた方が得であることは間違いない。

 「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」(孫子)である。