私事で誠に恐縮だが、11月20日は、亡父の命日。13回忌である。
亡父は、昭和8年生まれ。高度経済成長期をバリバリと働きぬいた流通マンだった。
当時の労働条件は、いまよりもかなり厳しく、週休1日が当たり前。亡父の定休日は木曜日で、土日祭日は仕事。当時のほとんどの父親がそうであったように、ろくに遊んでもらった記憶はなく、“モーレツ”を絵に描いたような男だった。
1年を通じてのまとまった休暇といえば、正月3が日、2月の冬休み、8月の夏休みの3回。この時が来るのがとても待ち遠しくて、旅行や映画、トランプなどに興じ過ごしたものだ。
子供のころは父親が不在、青年期になると私が家庭にいないことが多くなり、すれ違いの時間ばかりだっただけに、亡父との会話は密だったとはいえず、とても悔やまれるところだ。
だから、振り返ってみても、何かを直接、学んだということはなかったような気がする。
それでも、亡父は定年の60歳まで立派に勤めあげ、2人の息子を社会に送り出した。
しっかりと親孝行をしようと思っていた矢先に、突然倒れてそのまま逝ってしまった。
それほど分かりあった関係ではなかった亡父だが、3つだけ、遺言と思しき言葉を残してくれた。
①一緒に出掛けた相手とは一緒に帰る
②接待は徹底的に
③通夜・葬儀には万難を排して出る
まったく、一貫性は感じられないものだが、張り倒されながら教えてもらった。
そして、これまでの人生を振り返ると、私は3つの言葉をしっかり守っている気がしているし、これからも見えない糸に操られながら、守ることになるのだろうと思う。
死後12年が経過した後でも、生ける人間を動かす――。
凄いことだなと思うのと同時に、まだまだ亡父の掌から抜け出せない自分がいる。