ネットスーパーとは、Webサイトで注文を受け、食品スーパー(SM)と同じ様な品揃えで、当日や翌日にお客のもとに商品を届けるサービスのことだ。
ネットスーパーと聞けば、最先鋭のシステムにバックアップされた未来型の商取引を想像する方も少なくないことだろう。
しかしながら、受発注にWebを介在させることを除いては、その実態はアナログそのものだ。
ネットスーパーと称する大半の店舗は、ピッカーと呼ばれる従業員が、カートを押しながら、お客からの発注書を片手に売場をめぐり、商品をピッキング(=品揃え)しているのが一般的だ。
実際に売場でピッカーに遭遇した読者も多いことだろう。
西友(東京都/野田亨CEO)が日本初のネットスーパーを開業して早10年。ネットスーパー事業が黒字化したと発表している企業が続々増えている。
ただ、疑い深い私は、本当だろうか、と首をひねってしまう。
それというのも、一般的な食品スーパー企業の売上総利益率(=粗利益率)は24%、売上高販売管理費率(=経費率)が23%。その中でテナント料収入などを加えながら、何とか2~3%の営業利益率を確保しているのが食品スーパーのコスト構造の実態だからだ。
仮に5000円を購入して、配送費無料の恩恵にあずかったお客のケースを考えてみよう。
この購入による粗利益額は5000円×24(%)=1200円。時給1000円のピッカーが5000円分の商品をすべて揃える時間を10分とみると1000/6=166円。個宅への配送費用を400円として計算すると1200-(166+400)=634円となり、粗利益率は12.7%と半減する。
しかも、ネットスーパーのシステム開発費や維持費が、この上に加算されることになるのだ。
2010年度の決算数字を見ると、経費率が最も低いのはアオキスーパー(愛知県/宇佐美俊之社長)の16.7%なので、12.7%の粗利益率で黒字化させることができる企業は、日本の株式上場食品スーパーの中には1社もないことが分かる。
ところが多くの企業は、経費の付け替えなどのテクニックによって「黒字化」と発表しているようだ。
小売業側が出血大サービスをしているのだから、お客にとっては安くて便利となり、ネットスーパーの取扱件数が増加するのは当然至極だ。
しかしながら、実際に展開している企業が儲かっていないようなビジネスモデルが将来的に成長するはずない。
お客にとって便利であることは、ありがたいが、ネットスーパーを実践している各社は、儲かることも視野に入れる必要がある。それがネットスーパーの健全な成長につながる。