出版社には原稿の締切日とは別に、印刷所に版下データを送る下版日という締切日がある。『チェーンストアエイジ』誌は隔週刊の雑誌なので月に2回は下版日がめぐって来ることになり、その日は深夜近くまで残業を強いられる。
下版日の朝は、結構気が重い。しかし、版下データを印刷所に全て送り込んだ後の楽しみがある。帰宅前に寄り道する京王線笹塚駅前の「まんぷく食堂」だ。ここで、「武蔵野うどん」とホッピー1杯を腹に入れてから帰路につくのだ。
「まんぷく食堂」に出会う前は、「武蔵野うどん」という食物があることを知らなかった。
武蔵野地域や関東地方で生産された小麦粉を使ううどんで、特徴は、手打ちゆえに、かなりゴツゴツしていて、歯ごたえがしっかりしていることだ。人によっては、「ゴムのチューブを口にしているみたい」と言うだろう。しかし、その食べにくさがなんともうれしく、豚肉がふんだんに入った肉汁につけて食べる。
そんな折、取材先の方に「おいしいうどんがあるから食べに行こう」と誘ってもらった。看板をみれば「むさし野うどん 山屋」(埼玉県坂戸市)と書いてある。肉汁うどんの定食を頼んだところ、これがまたおいしい。私の「武蔵野うどん」のファン度はさらにアップした。
まだある。JR京浜東北線「川口駅」東口に「武蔵野うどん うどん屋うまかっぺ」の文字を発見。調べてみれば、ラーメン店チェーンで「日高屋」を運営するハイデイ日高(埼玉県/高橋均社長)の新業態。まだ店舗数は少ないが、どんなニッチにも、目をつけ先手を打つ事業家はいるものと感心させられた。
とはいうものの、「武蔵野うどん」は、万人受けしそうな感じではない。
吉野家ホールディングスグループの「はなまるうどん」やトリドールが運営する「丸亀製麺」のような讃岐うどんチェーンのように爆発的な人気を得るとはいまのところは考えられない。
それでも、関東に出張などでお立ち寄りの際には、話の種に「武蔵野うどん」をぜひ一杯すすってみてください。