デフレの日本で生活していると世界情勢が全く見えてこない。
しかし、食糧難は確実に迫ってきている。
裏付ける数字はある。
地球上の人口は300年前に6億人、200年前には9億人、100年前は16億人、現在は65億人と20世紀の100年間で一気に4倍に達している。
日本の人口も同じだ。1900年は約4500万人にすぎなかったが、現在は1億2000万人と3倍になった。
にもかかわらず、食糧の生産は他人任せ。日本の食糧自給率(カロリーベース)は、1960年の80%から、現在は40%に半減している。
日本の農地は470万ヘクタールほどあると言われている。しかし東京都の約1.8倍の面積を有する耕作放棄地の土壌には問題があり即座に生産体制には移行できない。しかも、農業の担い手である農業人口も減少している。
この事態に危機意識を持ち、食のSCM(サプライチェーンマネジメント)づくりに力を入れているのが神戸物産(兵庫県)の沼田昭二社長だ。
今後、食糧不足が予測される中国以外の新たな海外(エジプト)と日本国内の土地(北海道)を確保して農業事業「地産地工」を行っている。
地産地工とは、神戸物産の造語で、自社の農園(土地の確保)で農作物を栽培し(農薬管理)、自社工場で加工し、原材料の生産から商品の加工・製造までを行い、自社輸入して同社がフランチャイズ展開する「業務スーパー」やデリスタイルマーケットの「Green’sK」で販売するというものだ。
エジプトでは約3000ヘクタール(東京ドーム約670個分)の土地確保を計画する。
また、北海道では約600ヘクタールを確保した。除草剤を極力使わず、低農薬で安全安心を担保したオーガニック農業を志向する。
神戸物産と聞くと、「業務スーパー」や「Green’s K」の展開やローソン(東京都/新浪剛史社長)やオークワ(和歌山県/福西拓也社長)との業務提携ばかりが目立つ。
だが、沼田社長の本命は、そこにはなく、食糧供給を神戸物産のミッションと位置付ける。
「世界人口65億人のうち約8億人が栄養不足だから、天候異変などで不作がちょっと続くと日本に食糧は回ってこなくなる。実際に、いまや食糧の確保はなかなか難しい。だから農業事業をスタートさせた」。
食糧が売れないと嘆いている経営者が多い。
しかしながら、いまの食品小売業業界で、それとは真逆の価値観である食糧不足の危機意識を心底抱いている人間が何人いることだろうか?
(詳しくは『チェーンストアエイジ』誌2010年8月1日号 沼田昭二神戸物産社長インタビューで)