またチェーンストア業界の巨星がひとつ墜ちた。
滋賀県に本拠を構える平和堂の創業者で名誉会長の夏原平次郎さんだ。享年91歳。大正8年生まれ。
終戦後、近江商人の事績を学び、「勤勉・節約・感謝」の教えを忠実に順守。昭和32年に「靴とカバンの店・平和堂」を創業した。
昭和36年、滋賀県では初、全国でもまれな「正札販売」をスタート。昭和41年からは衣食住を取り扱う総合小売店舗を開発。「琵琶湖ネックレスチェーン構想」のもと、多店舗化を進め、現在2府7県に124店舗、年商3857億円を計上する企業に育て上げた。
後継者教育でも独特の手腕を見せ、長男で現社長の夏原平和さんがヒッチハイクによる世界一周旅行を申し出た時には家族の猛反対をよそにこれを認めることで、人間としての器を育てた。
後年の功績は、中国湖南省長沙市への出店である。社員全員の反対を押し切って平成10年に1号店を開業。現在は3店舗を構え200億円の売上高を計上、大きく利益貢献する。
「商業を通じて豊かな暮らしと文化生活の向上に貢献し、なくてはならない店になる」を社是とする夏原平次郎さんの遺伝子は平和堂の中にしっかりと伝承されるだろう。合掌。
『チェーンストアエイジ』誌2010年7月1日号