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ベルク―日本のマッディング・ウォーター(muddying the water)―

 現在発売中の『チェーンストアエイジ』誌2011年10月1日号では「CSA Special」としてベルク(埼玉県/原島功社長)の研究をしている。

 

 同企画内では、20品目を取り上げて、ベルクさいたま宮原店(埼玉県)と競合する3店舗とのショッピング・バスケット分析をしている。

 20品目の合計金額が最も安いのはオーケー大宮宮原店で4885円。2番目に安いのが5417円のヤオコー大宮宮原店、3位はイトーヨーカドー大宮宮原店で5424円。ベルクの店舗は5586円で最下位。オーケーとは実に701円の差がある。

 

 ところが、消費者に直接聞くと、「ベルクは安いからよく利用する」という声が多く、現実の調査結果とは真逆の反応をしていた。

 

 そこで、この企画では、ベルクの安さ感は、同社が所属するイオン(千葉県/岡田元也社長)グループのプライベートブランド「トップバリュ」の打ち出しのうまさや店内に高級感をもたらしながら価格はフェアプライスであるギャップにお客が安いと錯覚するから、と結論している。

 

 そんなことがあった後の10月5日(水)に同店を再び訪れると「99円均一」の売り出しの真っ最中。全店舗が一丸となって、99円均一セールを実施していた。

 

 これは同社が目玉とする毎週火曜日、水曜日の恒例企画でメーンの入り口には、トップボードに大きく「99円均一」と記して、お客に告知している。

 

 大玉の梨も99円だ。「通常99円均一だと99円販売用に仕入れた小玉を用意するケースが多いが、大玉にしているので割安感がある」と一緒に回った某食品スーパーの社長は評価した。

 

 同社の強みは、本部の指示を徹底的に具体化できる実行レベルの高さだ。

 店舗が1つになって「99円均一」を実施しているから、お客はどこの売場でも、本部の思惑通り、視野に99円の文字が入ってくる。それが刷り込み効果となって、ベルクに安いというイメージをもたらしているようだ。

 

 さて、2011年9月23日のBLOGではブライアン・ウルフ氏(リテイル ストラテジー センター社長)の提唱する「マッディング・ウォーター(muddying the water)」作戦を紹介した。http://diamond-rm.net/articles/-/3662

 

 かいつまんで言うなら、ウォルマートのEDLP(エブリデー・ロー・プライス)戦略に体力のない中小小売業が勝つためには、敵を“煙に巻く”ような奇策が必要ということだ。

 

 そして、毎週2日間、300アイテム前後の価格を99円にして、お客に安さ感を刷り込むベルクの手法こそ、日本のマッディング・ウォーター作戦なのだと感心した。