ファーストリテイリング(山口県/柳井正社長)、ワールド(兵庫県/寺井秀蔵社長)、ハニーズ(福島県/江尻義久社長)などSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel:製造小売業)の先達企業の好調を横目に、商品開発を始めた小売企業は少なくない。
ある大手ホームセンター(HC)のトップは、「HCには、ナショナルブランド(NB)の強いカテゴリーがそれほど多くないので商品開発はしやすい」とその潜在性に期待を寄せている。
また別のトップは、「いまや、NBとプライベートブランド(PB)、ストアブランド(SB)は大差がない。外注する工場が同じであることが多いからだ」と商品の品質面に強い自信をのぞかせている。
SPAは、「粗利率を改善でき、商品の差別化が図れる」という夢のような業態ではある。しかしながら、SPAは“魔法の杖”ではない。安易な参入や取り組みは危険きわまりない。
それというのも、商品開発に成功すれば、「製・配・販」業の売上と利益を手にできることができるが、逆に失敗してしまえば、トリプルパンチをなって自分を傷つけることになるからだ。
いまでさえ、中国から大量に開発輸入した商品が、売れずに行き場を失い、日本の倉庫にうずたかく積まれているなどという話は日常茶飯事だ。
また、NBをトレードオフして商品開発することで失敗するケースも少なくない。あるメーカーの担当者は、「消費が上向かないご時勢のなかで、メーカーもコストカットに努め、商品は単機能化しており、トレードオフは簡単にはできるものではない」と指摘する。
SPAで成功しているニトリ(北海道/似鳥昭雄社長)や良品計画(東京都/金井政明社長)は、メーカーから専門家をスカウトして、ノウハウを注入し、こうした課題にも取り組んでいる。
SPAには、クリアすべき難題も少なくなく、それらを正面から受け止める覚悟がないのであれば、最初からあきらめた方がいい。