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消費者の意見を聞かないからいい

 “団塊ジュニア”をターゲットに据えている小売企業は数多い。ところが、“団塊ジュニア”から支持を集めている企業は非常に少なく、流通外資の2社、コストコ(米国)とイケア(スウェーデン)に注目している。売場では小さな子供たち(団塊ジュニア・ジュニア)が元気に駆け回っている。もはやGMS(総合スーパー)では、あまり見かけなくなった光景だ。

 

 長く、流通外資の強豪2社をベンチマークしてきたある小売業のトップは「コストコもイケアもお客様から意見を聞かないことが最大の強みだ」と言い切る。「だから自社のオペレーションありきで売場づくりができる」。

 

「ただし…」とトップは続ける。「いつもお客様のことを考え続け、その要望を先回りしている」。

 

 言われてみれば、その通りで、コストコもイケアも大きな店舗をワンウエーコントロールで歩かされることになるので「ショートタイムショッピング」とはいかないし、日用生活品のすべてが揃っているわけではないので、「ワンストップショッピング」をできる店舗でもない。フードコートには、ファミリーが列をつくりいつも満席。精算のためのレジでもそれなりの時間並ぶことを強いられる。しかも、会員制ホールセールクラブのコストコでは個人年会費として4200円を徴収される――。どちらかといえば不便な店舗だ。

 

 その不便さを補って余りある価値を提供していることが、日本市場での2社の勇躍の源泉と言えるだろう。

 

 たとえば、コストコのプライベートブランド(=カークランド・シグニチャー)の粉末洗剤は、12.7kgで1698円。日本のナショナルブランドが、1kgで278円(特売価格)だとすると、12.7kgでは約3530円となり、これだけで1832円割安と言える。しかも、1kgの洗剤を13個も購入するのは一仕事だが、コストコでは一つの容器に入っており、持ち運びも簡単だ。

 

 いまの時代は、消費者の意見を聞いてから動いていては間に合わない。また、消費者の意見を聞き過ぎるあまり、振り回されることも問題だ。

 

 その意味でも、「消費者から意見を聞かない」という割り切りを持てる自信がある企業は強い。