以前、中日ドラゴンズの落合博満監督が、話していたことを思い出す。
「うちの選手はデイゲームに弱い。とくにナイターがあった翌日のデイゲームに弱かった。身体が動き出すまでに時間がかかる選手が多かったからだ。そこで、デイゲームの前には、早出をして、ウォームアップの意味を込めて、特守をさせることにした」。
現役時代に三冠王を3度も獲得したことがある落合監督はノックも天才肌。正面の球だけではなく、頑張っても一歩だけ届かないところやまったく届かないところに打ち分けることができる。
特守の際に3つの球を打ち分けると、選手の反応はそれぞれだった。
「届かない打球にも必死で飛びつく選手がいる一方で、初めから諦めて微動だにしない選手もいた。『いったいどこに打っているんだ!』とばかりに追わない選手は、オレが、わざと届かないところに打っていることを理解していない。チームの置かれている状況も理解していないし、デイゲームに弱いことも理解していない。だからそんな選手は使わなかった」。
「追う」「追わない」――。
両者の違いは何だろうか?
前者は、「なぜ、こんなことをするのだろう」と問題意識を持ち、監督の意図やチームの状況を理解するなど、自らの意思をもって練習をやっているということ。後者は、考えることなく、ただ与えられた練習をやらされているということだ。
そして、一流選手と二流選手の差とは、ここにある。
仕事もまさに同じで、「やらされている」と感じながらこなしていたらいつまでたっても腕は上がらない。意味のない仕事などひとつもないのだから、自ら「やる」という姿勢で取り組むことが大事だ。