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たった3年で180度の方向転換

 「むかし、良い商品とは掃きだめに鶴だった。いまは、掃きだめに真珠だ」。

 5~8年前に、ある大手GMS企業の経営者は従業員を前に力説していた。売場を“掃きだめ”にたとえるとは随分乱暴な表現だが、真意は「いまの売場にどんなに良い商品を並べても目立たないのでそれだけでは売れない」ということだ。

 

 かつて、良い商品は不良不動在庫の中では鶴のように美しく際だって見えたが、商品供給過多である現在の売場では真珠のように小さくひっそりとしていて誰にも気づいてもらえない。

 

 だから「不良不動在庫を整理し、良い商品をプロモーションで主張し、接客して特性を説明しなさい。同時に新しい価値を持つ“真珠”を見つけることに努めなさい」と経営者は続けた。

 

 しかし、接客を強化していたはずのその企業の店舗に何度通っても、一度たりとも接客を受けたことはなかった。

 

 しかも、2~3年前から、その企業は、良い商品を接客して売るのではなく、低価格訴求に力を入れ、ディスカウントフォーマットを開発するなど大きく方向転換している。

 

 案の定、その企業の業績は、現在芳しくない。

 

 変化対応業を謳い、朝令暮改をよしとする企業風土は分からなくない。市場や消費者の変化は予想以上に速いものだ。

 しかしながら、経営者の言うことがたった3年程度で180度変わってしまう組織は、やはり考えものだ。