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44万人のマーチャンダイジング

 古い話で恐縮――。

 歌手のフランク永井さんが歌った『有楽町で逢いましょう』は、1957年(昭和32年)に開業した有楽町そごうのコマーシャルキャンペーンソングだった。当時の百貨店は、いまの凋落からは考えられないほどの急成長業態であり、有楽町そごうの開店は、栄華の象徴ともいえる出来事だった。

 しかし、流行の最先端であった有楽町そごうも、不振のため、2000年に閉店。いまは家電専門店のビックカメラ有楽町店として生まれ変わり、大変な賑わいを見せている。

 

 2009年5月6日に51年間の歴史に幕を閉じたのが池袋三越だ。長く低迷を続けており、三越伊勢丹ホールディングスが2008年9月に閉鎖を決めていた。

 この10月30日には、ヤマダ電機が「LABI1 日本総本店 池袋」として改装オープン。約7000坪の売場面積に150万点を集めた品揃えに消費者は殺到し、復活ののろしをあげた。

 

 日本百貨店協会によれば、日本の百貨店は86社あり、270店舗を展開している。日本の人口を1億2000万人と想定すると、1店舗当たりの人口は44万4000人で百貨店1店舗が定める必要商圏人口の100万人には遠く及ばない。1991年度に約10兆円あった市場規模は、2008年度には7兆3814億円と4分の3に縮小している。

 

 オーバーストア化の中で、生き残るためには、44万人で成立するマーチャンダイジング(商品政策)に切り替えることがまず必要だ。すなわち、ビックカメラやヤマダ電機の事例のように、売るモノを変えていかなければいけない。

 

 ところが、多くの百貨店は、商品的には、小手先の政策を繰り返し難局を乗り切ろうとしているようで、人員整理ばかりに躍起で、本業再生に向けてのドラスティックな政策は打ち出していない。

 都心部の百貨店は超一等地に立地しているのだから、売るモノを変えれば、店舗は必ず復活する。

 

 善は急げ! 逡巡しているうちにアッという間に市場規模は半減してしまう。