イトーヨーカ堂の渡辺泰充執行役員(現:販売本部プライスグループリーダー)は、同社の北京1号店の店長として10年近くを中国事業の基礎づくりに努めてきた。
この間、休んだのは年間1日ぐらいだった。
その他の日は、とにかく、開店前から閉店後までの時間を店舗に貼りついて過ごした。
渡辺さんは振り返る。「休まないけど、まったく疲れなかった。何か政策を実行すれば、無駄がなく、みんな当たるから仕事にやりがいを感じた。高度経済成長の魔力とは、こういうものなのかもしれない」。
そう言えば、日本の高度成長を支えてきた私たちの親の世代も休まなかった。休日は週1回。夜遅く帰宅すれば一杯ひっかけて、バタンキュー。それでも、翌朝になれば、また元気を出して、出勤していった。仕事についての愚痴を聞いたことがない。
伸びている市場が栄養剤の役割を果たしていたのだろう。
日本人が“働きバチ”と世界から奇異な目で見られた時期があったことも、いまは昔――。
人間も国家も元気の源は成長にある。それに引き換え、成熟段階に達した市場はなんとつまらないものだろう。