和田昭男イズミヤ最高顧問は、1999年に取締役会長を勇退して以来、経営に口をはさむことは一切ないという。
けれども、商売人としては、いまだに現役そのものだ。
話の中では唐突に「モンスラ」なる言葉が飛び出したりする。
「巣鴨地蔵通り商店街では“モンスラ”が流行っているみたいですね」。
「モンスラ?!」と周囲にいた者たちは顔を見合わせ、クビをかしげる。
モンスラとは、“モンペスラックス”の略語。スラックスのおしゃれさを残しながら、腰回りの素材にはゴムを使うなどの工夫で着心地の良さも失われない、お年寄り必須の万能パンツだ。
それほどまでに、和田さんの流行に対する感覚は敏感だ。
「この世の中で不変なものは愛だけです。人間は変わるものですし、それにともなって生活も変わります。すべての価値観も時代や状況に応じて変わります。だからマーケットも変わるのです。ということは、小売業は常に変わり続けなければいけません」。
敬虔なクリスチャンである和田さんが流行に敏感である理由はこんな言葉の中にも見出すことができる。