6月14日は、『チェーンストアエイジ』誌の常連執筆者の1人である田村正紀先生を兵庫県宝塚市のご自宅に訪ねた。現在は、神戸大学名誉教授の重責にあるとともに、この4月1日からは北海学院大学特任教授に就任している。
以下は、四方山話中に先生から出てきた言葉――。
「明治維新の志士は松下村塾、いまの政治家は松下政経塾から出てきているようにイノベーションとは1つの場から発生することが多い」
「現代の経営者は教養に不足している。少し難解ではあるが、天台宗僧侶の慈円が著した『愚管抄』(ぐかんしょう)を読むことを勧めたい。欧米の経営者の多くはアリストテレスが書いた『ニコマコス倫理学』を読み“徳”について学んでいる。経営者の行きつくところは徳にあるということだ」
「経営者は長期的視点に立って経営すべきだ。創業者であれば、70歳くらいまではトップに座っても構わない。ただし、60歳を超えてからは、実務には手を染めずに、『(自分の)仕事を任せられるのは誰か』という視点で従業員の評価に徹するべきだ」
「ウォルマート創業者のサム・ウォルトンの凄さは、自分に不足する知識が何なのか踏まえたうえで、その分野に強い人材を重用したこと。その延長線上で『君臨すれど統治せず』という創業者亡きあとのファミリービジネスのあり方を家族たちに守らせたことだ」
「人間をまとめるシステムには、国家があり、宗教があり、企業がある。しかし、国家と宗教は、世界を隈なくカバーするには限界がある。ところが、企業には限界がない。そこが企業の優れたところである」
「東京都と秋田県では海外旅行に行く割合が6倍違う。東京が100人中60人だとするならば秋田県は10人だ。だから日本の平均の数字で物事を見るのは意味がなく、“地域”を念頭に考えることが大事だ」
1時間30分ほどの話の中で次々と繰り出される目からうろこの言葉の数々。ひとつひとつかみしめながらしっかりと頭に叩き込みたい。
※田村先生の最新刊は、『消費者の歴史 江戸から現代まで』(千倉書房刊、2300円+税)です。ぜひ、ご一読ください。