京都を歩いていると時々目にするのは、各種アンテナショップやメーカーの直営店。観光客、ビジネスマン、学生、さらに海外からも多様な人が集まる街であるため、幅広い層へ情報発信する場として適しているのかもしれない。今回は、数ある店舗のうち、ごま油メーカーの直営店に足を運んでみた。
白がベースの内装、明るく清潔な雰囲気
京都市中京区の烏丸御池エリア。ビジネス街の烏丸と隣接しながらも、落ち着いた雰囲気で人気がある。おいしいベーカリーショップや和菓子店も点在、繁華街の河原町とはひと味違う魅力が特徴だ。
その一角に店を構える「gomacro Salon(ゴマクロサロン)京都烏丸御池」。運営するのは、ごま油の製造を手掛ける山田製油。同社は京都に本社を置く地元メーカーであるが、市内中心部で、アピールしたい何かがあるようだ。
店は御池通りに面する角地に立ち、外観はおしゃれなカフェ風である。
実は、以前から何度も前を通ったことがあるのだが、飲食店としては認識していても、実際に中がどうなっているのは知らなかった。一度は入ろうと思いながらも通りから少し覗くと女性客の比率が高く、何となく気後れしていた。しかし今回、思い切って入ってみた。
私が足を運んだのは土曜日の昼少し前。あらためて店の前に立つと上部には店名の「gomacro Salon」と記してある。また「山田製油」の文字も目に入った。
いよいよ入店。内装は白がベースで、そこに木製のテーブルと椅子が配置。明るく清潔な感じである。
案内された、1人用の席でメニューに目を通す。ここのウリは、何といってもごま油やごま関連商品を使った料理。「おすすめ」という坦々麺のほか、ビビンバなど多様な料理が写真入りで載っていた。
私が選んだのは、独自ブレンドのスパイスを使った「gomacroカレーセット」。トッピングの野菜は山田製油の「エキストラバージンごま油」で炒めているとある。本来なら、一番人気の坦々麺を注文しようかと思ったが、写真“映え”しそうという理由で急きょカレーにした。
事前調査によると、山田製油はこだわりのごま油を製造している企業。一般的なごま油は、原料のごまを数度圧搾して油を抽出する。低価格商品の場合、化学溶剤を入れ、油を完全に絞り出しているものもある。これに対して山田製油は、品質、味を追求する方針のもと圧搾は最初の1度のみ。つまり「一番搾り」を使っているのだという。
普段、ごま油を意識して食事したことがないので、そこにはどんな奥深いワールドが広がっているのか、徐々に興味が湧いてきた。期待に胸を膨らませ料理を待った。
料理教室やワークショップを開催
しばらくして私の前に置かれた料理がこれ。どうです、いい感じでしょう。
早速いただきます。
スプーンでごはんとカレーを適量すくい、口へと運ぶ。お、いける。
さらにトッピングの野菜も。ほぅ、こんな感じなのか!ごま油で炒めてあるというから、油っぽいのを想像していたが、サラリとしながらもごまの風味を感じる、上品な味わいだった。
と、ここで私の口の中にじわりと広がってきたのがカレーのスパイシーな刺激。注文の際、女性スタッフが「少し辛いですよ」と説明していたのを思い出した。
そこで活躍するのが、テーブルの上に置かれている数々のごま関連商品。その中から、「辛い時は、これを試してください」とお姉さんから教えてもらっていた、ねりごまを手に取る。フタをねじり、少しだけスプーンに乗せて食べてみた。
これはすごい。
ごまってこんなに濃厚な味がするのか!続けてカレーに入れたところ、あーら不思議、急にマイルドになって食べやすくなるではないか。
急に楽しくなってきたぞ。
カレーについていた野菜サラダにも、ごま油をかけてみた。これもウマい。味の表情が、一瞬で変化するのを体験したのは初めてで、とても新鮮だった。
食後に出てきたデザートもしゃれていた。見ると、コーヒーについていた砂糖はオーガニックシュガー、ミルクは豆乳。健康に配慮しているため、「卵・乳製品などの動物性食材と白砂糖不使用」のようだった。
実はこの店、「未来ある子供たちと、育てるお母さんを守る」をコンセプトとする取り組みにも力を入れている。料理教室のほか、食の安全、子育てがテーマの講座、ワークショップも定期的に開催している。なるほど、だから女性比率が高かったのか。でも一定数、男性客も地用していたのでご安心を。
単なる飲食店なのではなく、健康、安全安心を重視したメーカーとしてのモノづくり、価値観を訴求するための拠点がこのゴマクロサロンのようだ。
山田製油のWebサイトを見ると、この店のオープンは2015年1月とある。ただここ数年はコロナ禍で、十分な活動ができなかったと想像できる。また飲食店にとっても厳しい時期だったに違いない。それでも粘り強く営業しているところからは、同社のこの直営店にかける意気込みが伝わってきたような気がした。
もう満腹である。なかなか有意義な時間を過ごし、私は満足して店を出たのだった。