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東日本大震災 “月光仮面”は誰でしょう?

 私「ソフトバンクの孫正義さんが100億円の義捐金を贈ったとか、ユニクロの柳井正さん、セブン&アイ・ホールディングス創業者の伊藤雅俊さん、楽天の三木谷浩史さんは10億円だとか、ニトリの似鳥昭雄さんは5億円とかニュースが流れました。流通業界の方々が随分出しましたね」

 

 ある経営者「企業の創業者って凄いよね。懐からポンと大枚だもの。僕はサラリーマン経営者だからそんなもんないけど」

 

 私「普通そうですよね。また、同じオーナーでも世襲した人なら、今度は創業者に遠慮してそんなことはできないでしょうから、やっぱり創業経営者独特の行為なんでしょうね」

 

 ある経営者「まあそうだよね」

 

 私「だけど、こんなに巨額の義捐金が集まっているというのに、被災者に届いて感謝されたという話をほとんど聞きません」

 

 ある経営者「そうだね。ほんとにどこに行ってしまったという感じだよね。ところで知ってる? この4月下旬に宮城県石巻市の避難所で『西日本小売業協会』『西日本小売業有志の会』と名乗ってキャッシュを配ったある上場小売業の創業経営者がいたんだよ。団体に寄付したところで、被災者には届かないと言って、封筒にキャッシュを入れて、社長と社員が直接配ったんだ。その額は実に約3億円!」

 

 私「えーっと、一人に3万円ずつ渡したとしても1万人分か。配るだけで疲れてしまいそうな…」

 

 ある経営者「初めは、危ないお金と思った被災者の方々が受け取りを拒否したらしいけど、そのうち話が通じたみたいだね。2日間にわたって避難所で直接現金を渡したんだけど、もらえなかった人からは『不公平だ』と市役所にクレームが入ったそうだよ」

 

 私「それはお角違いのような気がするけど、役所や団体に寄付すると、そういう公平性の部分での問題が必ず起こります。そんなこともあって、なかなか届かなくなってしまう」

 

 ある経営者「それで結局は、被災者の方々に迷惑をかけている。それだったら、キャッシュを直接渡してしまえ、というその創業経営者の考えは分かるし、ある意味正しいよね。しかも、売名行為と思われたくないから、“月光仮面”のように匿名を死守したなんて、大変なことだ。そんな発想は、創業者じゃなければなかなか思いつかないし、たとえ思いついたとしても実行するのはさらに難しい。奇行だものね」

 

 私「そうですよね。ところで気になって仕方ないんですけど…その方は誰なんですか? 教えてくださいよ」

 

 ある経営者「そうきますか? ホント、記者のイヤな習性だね。誰でもいいじゃない」

 

 私「そんなこと言わないで教えてくださいよ」

 

 ある経営者「ダメ、自分で取材しなさい!」

 

 ※その後、取材を通じてこの創業経営者が誰なのかを特定することができましたが、本人の意思に敬意を表してここでは明らかにしません。