「阿吽の呼吸」「顔色をうかがう」「以心伝心」「ツーカーの仲」など日本語には、意思をしっかり表明しないことをよしとするような言葉遣いが多い。
しかし、この日本的な情緒がまかり通らず、評価もされない職種が少なくとも2つあると思う。
1つは政治家だ。政策をしっかり打ち出し、簡易な言葉で有権者に伝え、支持者を増やす。敵対する政治家を説得することにも言葉は重要な武器だし、学生のころからディベートで鍛錬を積んできた外国人ともタフな交渉をしなければならない。政治家は、「言葉が命」とも言え、演説が苦手であることは、その資質がないに等しい。
もうひとつは、経営者だ。自分の考えている政策を全従業員に余すところなく伝え、実践してもらう。そのためには、やはり言葉がカギを握る。零細企業のうちは、ニコポン(ニコニコ笑って従業員の肩をポンと叩くだけのマネジメント)もいいのかもしれないが、従業員が増えれば増えるほど、そんなことは誰も許してくれなくなる。なんと言っても、親方が何を考えているのかをわからなければ、部下は戸惑ってしまう。
にもかかわらず、驚かされるのは、自分の言葉をしっかり持って、意思表示できる政治家や経営者が非常に少ないことだ。
アナウンサーのように流暢に話す必要はないけれども、「俺の意を汲んでくれ」という態度では、話にならない。