経営者の醍醐味とは何だろうか?
戦略を策定して、人材の配置を整え、時期を見計らって実施させ、思惑通りの成功を収める――。
思わず、「我が意を得たり!」と叫んでしまうような状況こそが、愉悦の時なのだろう、と考えていたが、ある食品スーパーの経営者は違った。
「しっかりした戦略を策定して、方針を打ち出し、従業員に理解してもらう」。
そこまでは一緒だ。
ところがそこから先が違っている。
「思惑通りに成功すれば、もちろんうれしい。でも、もっとうれしいのは、従業員が悪戦苦闘を繰り返すなかで、仕事を楽しむようになり、スキルアップし、一皮も二皮もむけ、私が思いもしなかった想像以上の好結果を出したときだ。逆にいえば経営者が1人でできることなど限られている」。
カリスマ的な経営者1人の力で動かすマネジメントを否定はしないが、それではどこかで、限界に達してしまうだろう。所詮、才能は枯渇するものだ。
しかし、この経営者のように従業員を成長させながら、企業を成長させるというマネジメントであれば、自分の度量以上に企業を成長させ続けることができるかもしれない。