駄文を書くにしても、ジョギングをするにしても、テニスをするにしても、スランプというものは、必ず訪れる。これをいかに克服するのか、は人生の大きなテーマのひとつである。
最近、たまたま2人の方からスランプ克服法を聞いたので、紹介したい。
1人目は、体操の内村航平選手(22)。2008年北京五輪の個人総合、団体総合の銀メダリストで2012年のロンドン五輪でも、金メダルにもっとも近い位置にいると言われる青年だ。
彼は、試合中に緊張することがほとんどないという。
猛練習で毎日、これ以上できないほど自分を追い込んでいるという自信があるからだ。
その練習の中には、競技中に失敗した時のカバー方法、調子が上がらない時の対処法なども含まれ、「むしろ悪い時にこそ練習をしたい」と内村選手は平然と話す。
普通、スポーツ選手は、大会開催日に合わせて調子を整えていくものだ。
内村選手ももちろん同じだが、最悪のことも想定し、歩留まりを設定して、たとえ調整に失敗しても大丈夫なようにセイフティーネットを設けているわけだ。
さて、2人目は、将棋棋士の米長邦雄さん(68)だ。将棋のスランプというのは、どうしていいのか分からないものなのだという。考えれば考えるほどドツボにはまり込んでいく。
そこで米長さんは、スランプに陥ると、ちょっと多めのお金を懐に入れて、米国ラスベガスに飛んでしまう。
ラスベガスでは、何も考えずにただひたすらギャンブリングに興じる。
「あのお金、惜しかったなあ」と落胆して成田空港に到着する頃には、絶好調には遠いものの、酷い状態は脱しており、平時の調子を取り戻しているのだという。
もっとも最近は、そこまでの体力がないので、温泉旅行に行くそうなのだが…。
どんな仕事でも趣味でも、競技でも、必ず訪れるスランプ――。
一流の達人は、そこから逃げ出すことなく、正面から受け止め、オリジナルの克服法を実践しているのである。