「上から目線」という言葉がずいぶんと使われている。
他人を見下したような態度や口の利き方のことを言う。
同級生や同期生同士なら、偉そうなそぶりを「上から目線」と非難されても仕方のないところだろう。
だが、いまや、「上から目線」の烙印は、先輩、先生、上司、親方、監督、コーチやときに両親、祖父母にも押される。確かに、こういう役職の中には傲岸不遜な輩もいるので、「上から目線」と批判したくなる気持ちは分からないではない。
だけど、それは、やっぱり違う。ある集団において、開発途上の者の能力に応じて先達が接していくことは悪いこととは思えないからだ。
少子化の影響もあるのだろうが、いまの大人たちは子供たちにヒヨり過ぎる。後輩、生徒、部下、弟子、選手に嫌われたくないがために、言いたいことの半分も言わない。
その結果、後進の成長は中途半端なところで止まってしまう。
そんな折りに、ファーストリテイリングの柳井正さんの著作『成功は一日で捨て去れ』(新潮社刊)のなかに、あった一節に、はたと膝を叩いた。
「子供を大人のように扱う。これはまったく誤っている。元々、モラルや社会ルールを何も知らない子供は、やはり子供なのだ。当然だけれど、社会のルールや礼儀作法であるしつけ、あるいは生活していくための知識など、知っておくべきことは最低限知っておかないと大人にはなりえない。それらをすべて飛ばして最初から子供を大人のように扱ってしまっている。(中略)そうして育ってきた人たちは『甘え』に慣れ親しみ、自分を律すること、我慢することに慣れていない」(P70)。
これで自信は確信に変わった。どんな誹謗中傷を受けようとも、能力開発途上の人間を業務上は同等に扱ってはいけない。
先達のみなさん、「上から目線」の誹りを甘んじて受け入れましょう。