中学校の頃に遅刻の常習犯がいて、ついに担任から反省文を書かされることになった。
「何度も遅刻して、すいません。もう2度と遅れません」と書いて提出したところ、「『すいません』とは怪しからん、お前は林家三平か!」とまた怒られた。
こんな風に、私たちは、「すみません」または「すいません」という言葉を自然に発してしまう。
反省文のように、詫びを入れる時の「すみません」というのは、状況に非常にフィットしており、言葉の使い方として違和感はない。
しかしながら、以前から気になっていたのは、もうひとつの使い方である。
・電車で席を譲ってもらった時――。
・レジの方にサッキングしてもらった時――。
・ご馳走になった時――。
つい、「すみません」という言葉でやりとりしてしまうのだけれども、これはおかしい。
ここは「ありがとう」と言うのが適切だ。
英語にするともっと分かりやすい。
「I’m sorry.」と「Thank you.」は全く別物である。
人に何かしてもらった時に、「I’m sorry.」とは、まあ言わないだろう。
慣用句としかいいようがなく、なぜ、使ってしまうのかはよく分からないのだが、自分を振り返っても、何かにつけ「すみません」を連発してしまっている。
ところが、言葉の受け手は「すみません」と言われるのか「ありがとう」と言われるのかでは、随分違う。
以前、レジのパートさんを取材した時に「精算後に、お客様に『ありがとう』と言っていただけることがうれしいから一生懸命仕事をしている」と話していたのを思い出す。
「すみません」も「ありがとう」も同じ5文字。
であるならば、もっと、もっと、「ありがとう」を使いたい。