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小売業界は闘っているだろうか

 Jさん「安定した日常生活を送っていると、何かと闘うことをやめちゃうよね。学生のころは、学生運動に没頭して闘った若者たちも、『就職が決まって髪を切った』途端に丸くなってしまって…。君は何かと闘ってるかい?」

 

 私「テニスやマラソンで仲間に勝つことにはこだわっていますね。でもそんなもんかな」

 

 Jさん「そういう話じゃなくてさ、規制とか制度とか慣習とかさ。小売業はどうなんだろうね?何かと闘っているのかね?」

 

 私「中内功さんのころは、メーカーと闘い、卸売業と闘って、価格決定権を奪取しました。『チェーンストアとは工場を持たないメーカーだ』と旗を振り、プライベートブランドづくりにも専念して物価を確実に下げてきました。でも、いまは<中内功さんVS.松下幸之助さん>というような形で闘志むき出しの敵対関係をもって闘争するということはなくなっているような気がします」

 

 Jさん「むしろ、供給過剰の現在は、小売業の方が強くなって、『泣け、泣け』とメーカーを叩いている。その半面で、自分よりも明らかに強そうな者には向かっていっていないんじゃないかな?」

 

 私「まあ、そういうところは否めません」

 

 Jさん「たとえば、消費税が10%以上に上がることがあるところ既定路線のようになっているけれども、小売業界は業界として政府に意見を言っているかねえ? “セシウム牛”も生産者が生体を処分すれば補償金をもらうことができるけれども、小売業者が商品として店頭に並んだものを処分したところで誰も補償してくれない。おかしくないかねえ? 小売業はライフラインの機能をはたしていると言われながらも、優遇されるのは製造業ばかりで、電気料金も相対的に高い。でも、政府に対しては何も言わない。これって闘っているとは言えないよね」

 

 私「確かにそうですね」

 

 Jさん「チェーンストアは、企業が大きくなるのにともなって、もの分かりの良い大人になってしまい、誰かと何かを争うということ自体やめてしまったんじゃないかな? そんな現状に僕はいらいらしているんだけど君はどう思うの?」

 

 私「返す言葉がございません」