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ホメオスタシス(恒常性)に逆らっても、逆らわなくても

 ホメオシタシス(恒常性)とは、生物学の世界の言葉だ。

 生体の外界の環境が変化しても、生体内の状態が一定に保たれる性質である。

 生体は何か変化が起きたときには、自然にそれをもとに戻そうとするものなのである。

 

 このことから考えれば、人間は元来、変化を好まないものであることが分かる。すでに身体の仕組みからして、保守的になるようにできているのだ。

 

 だから、ホメオスタシスに逆らい、変化したくない性質を打ち破るのは大変なことだ。

 変化とは、きっと、身体にとって悪いことなのだろう。人間はほうっておかれれば、何も新しいことはしないのではないだろうか?

 

 実際、国立社会保障・人口問題研究所が12月10日に発表した世帯動態調査では、30歳代後半の男性の約4割が親と同居していることが明らかになった。同研究所は「未婚・晩婚が増えているほか、景気の低迷で親からの自立が経済的に厳しくなっている」と分析している。

 けれども、原因は決してそれだけではないだろう。

 人間に、ホメオスタシス的な性質が備わっているのであれば、少しもおかしいことではないと理解できる。

 

 しかし、人間を取り巻く環境は絶えず変化している。

 変わらなければ、死んでしまうことだってあるのだから、意識して変えなければいけない。「変化を楽しむようにしなければいけない」とマーケティングの教科書にも書いてある。

 

 ところが、面白いことに、ホメオスタシスがある一方で、人間は環境変化にも対応しやすい性質を兼ね備えている。

 嫌々引っ越しした新居も「住めば都」となってしまうのだ。

 

 相矛盾する2つのことができる人間の能力は計り知れない。