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「磯江毅=グスタボ・イソエ」特別展に行ってきました

 東京都練馬区立美術館の「磯江毅=グスタボ・イソエ」特別展に行った。

 

 磯江毅(いそえ・つよし)さんは、1954年生まれ。1973年、大阪市立工芸高等学校を卒業すると、シベリア経由でスペインに渡り、アカデミア・ペーニャや王立美術学校に学んだ。

 

 「現実を忠実に再現する」というスペイン式デッサンの腕を磨き、精密な写実画を探究した。1980年、「サロン・デ・オトニョ」で一等賞を受賞。やがてマドリード・リアリズムの俊英画家グスタポ・イソエとして認められ、スペイン国内外で注目されるようになっていく。享年53歳。

 

 今回の特別展では、30年余りに創作された約80点の作品を展示している。

 その中で私がもっとも注目したのは、『静物 (棚の中のカリフラワーのある静物)』(116.0 cm× 81.0 cm 紙、鉛筆、水彩 1991)である。

 

 木製の茶色い棚の扉があいている。下段にはワインのボトルや酒瓶が4本。上段には、新聞紙が敷かれ、その上に置かれた白い皿にはみずみずしいカリフラワーが乗っている。

 カリフラワーを凝視すると、あっ、ハエがとまってる!

 つい、手で払ってしまいそうになるほどの錯覚を覚え、作者にしてやられていることに気づく。

 

 もうひとつの驚きは、どの作品も描かれた年代が若いことである。

 『鰯』(2007)、『深い眠り』(1994‐1995)、『新聞紙の上の裸婦』(1993‐94)、『静物(柘榴と葡萄とスプーン)』(1994)、『鮭“高橋由一へのオマージュ”』(2003)、『バニータスⅡ(闘病)』(2006‐07)、『かかし(鳥よけ)』(1997)、『サンチェス・コタンの静物(盆の上のあざみとラディッシュ)』(2000‐01)、『静物 鶉』(1996)――。

 

 磯江さんが1954年生まれであるのだから当然のことではあるけれども、私にとっては昨日というべき日々に多くの秀作を制作していることには驚かされる。

 

 磯江さんの作品と日付を相互に見比べながら、自分はその頃、何をしていたのかなあと思い起こすとともに、いますぐにでも何かを始めなければいけない、と久しぶりに反省し、発奮させられた。

 

 何をするにも良い季節、秋の到来である。

 

 なお、「磯江毅=グスタボ・イソエ」特別展は、2011年10月2日(日)まで開催されている。