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老後の不安で何もできない

 世界一の長寿大国日本と言われるけれども、これは幸せなことなのだろうか?

 とくに最近の日本の高齢者事情を見ているとそう思う。

 

 65歳で仕事をリタイアした後、男性なら15年、女性なら20年前後の時間が残る。

 しかし、子供や孫に囲まれて楽しく老後を過ごす高齢者は少ない。同居の場合は、婿や嫁との関係がぎくしゃくしてうまくいかないケースの方が多い。

 

 職歴と老後の生活は、ほとんど関係なく、知識人、政治家、経済人、俳優、スポーツ選手などの有名人も楽しい余生を送っているとは言えない。

 かといって、残る体力に任せて70歳まで働く人生にも疑問符だ。

 

 老人ホームにも明るい老後が感じられるものは少ない。

 祖父が入居していた老人ホームは、ただその日を目指して、1日1日をひたすら消化していくような感じがして、脇で見ていても気の毒だった。

 

 年金制度や健康保険制度などの社会保障制度が破たんを迎えそうな状況にあって、国民は不安ばかりが募り、老後のプランはまったく描けない。 

 経済を回復させるためには、消費額を増やし、内需を引き上げる必要があるが、老後の不安を考えると貯蓄に回さざるをえず、日々の生活にはどんどん潤いがなくなっていく。

 固定資産は多くの人が持っているけれども、リバースモーゲージ(持ち家や土地を担保に金を借りる制度)が整っていないので、日本の個人金融資産は約1500兆円と過剰貯蓄の域に達してしまっている。

 

 こうなってしまうと、国家規模で対策を打ち出し、実行しない限り、閉塞感は増すばかりで、日のいずる国の斜陽に歯止めはかからないだろう。

 

 「長いいのち」を手放しで喜べるようになるために不足しているものが、いまの日本にはあまりにも多すぎる。