フィリピン出身のボクサー、マニー・パッキャオは30歳。11月15日にWBO世界ウエルター級タイトルマッチで王者ミゲール・コットを倒し、プロボクシング史上5人目となる5階級制覇を達成した。
パッキャオは、フライ級(50.8キロ)を振り出しに次々と他階級のベルトを集め、今回は体重65.7キロ、とスタートからは実に15キロ増。もともとは、華奢な体格であるが、5階級制覇のために無理矢理に体重を増やしているようなフシがあり、テレビ画面で見る限り、コットよりも一回り小さな印象だった。
小柄なパッキャオの持ち味は、「ファイヤーパワー」(狙撃能力・火力)にある。
この試合でも「ファイヤーパワー」は健在。圧巻は第4ラウンド残り20秒、コットの鉄壁のガードをかいくぐって、左アッパーカットでダウンを奪ったシーンだ。
猛スピードで前後左右に不規則な運動するA4判1枚くらいのスペースに力のこもったパンチを繰り出すことは至難の業である。しかし、パッキャオは、重量階級にいくほど不利になる“小柄”という特徴を逆に味方につけ、スピードと針の穴をも通す「ファイヤーパワー」で世界を制した。
パッキャオの「ファイヤーパワー」を見ながら、前サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムの話を思い出した。
「日本代表が欧州や南米のようなサッカーをマネしようとしても到底追いつけない。彼らとはもともと体格が違うからだ。日本は、個人技や組織能力ではすぐれているのだから、小柄な身体の持ち味を生かし、欧州や南米とは異なる独自の戦術を開発すべきだ」。
自分の体格を生かした戦術が求められるのは、ビジネスの世界でも同じだ。
企業であれば、その時の規模、財務、取引、人材などにもっとも適した戦術は必ずある。それは、いまの王者の手法とは異なるかもしれない。けれども、弱気になったり怯むことなく、自らの「ファイヤーパワー」の開発に乗り出したい。